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【長編SS】聖良「スクールアイドル・鹿角理亞」【ラブライブ!サンシャイン!!】

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1: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 21:30:37.84 ID:A+QPU2Oi
8月 ~ラブライブ北海道地区予選会場~

理亞「……」

黒髪「いよいよ次が私たちだね……!」

茶髪「うわぁ、緊張してきたぁ……っ」

黒髪「本当に緊張するね、心臓壊れそうだよ……。理亞ちゃん、何か落ち着く方法とかない?」

理亞「……」

茶髪「理亞ちゃん?」

理亞「――っ、え、あ。なに?」

黒髪「いや、緊張するなぁ、って。……やっぱり理亞ちゃんも緊張してる?」

理亞「あ……、ううん。大丈夫。あんなに練習したんだから、大丈夫に決まってるでしょ。努力は、裏切らない」

茶髪「そ、そうだよねっ。よし、練習の成果を見せよう、おー!」

  ……それでは次の出場グループです。函館聖泉女子高等学院――

理亞「……出番だ。行こう」

理亞(そう、大丈夫。あんなに練習した、努力してきた……努力は、裏切らない。だから大丈夫……)

理亞(だからもう二度と、あんなミスはしない。二度と、絶対に――)

2: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 21:32:01.10 ID:A+QPU2Oi
――――
――

12月 ~東京~

ダイヤ「えー。本日は至らぬ後輩たちのために、このような催しを開催頂き誠にありがとうございます」

ダイヤ「彼女たちがここまで来られましたのも、ひとえに皆さまのご支援あってこそと――」

聖良「すみません。長くなるなら先にお鍋食べ始めてもいいですか?」

ダイヤ「ちょっと! まだ話してる途中ですわよ!」

聖良「だって長いですよ。そもそも今日は私とあなたの2人だけだし、挨拶なんていらないでしょう」

ダイヤ「まったくもう。では簡潔に致しますわ。――こほん」

ダイヤ「それでは、第3次・Aqoursの春季ラブライブ決勝進出を祝して!」

聖良「乾杯! ……まぁお茶なんですけどね」

ダイヤ「未成年ですから。私の前で飲酒は許しませんわ。ほら。鍋、いい具合ですわよ」

3: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 21:34:28.07 ID:A+QPU2Oi
グツグツ…

聖良「あったかい……やっぱり冬はコタツに鍋ですね」んぐんぐ

ダイヤ「ええ。日本の心ですわ」もぐもぐ

ダイヤ「それにしても良かったのですか? お祝いしてもらった上にカニ鍋なんてご馳走になって。費用くらい出しますのに」

聖良「お構いなく。最近は質素な食事ばかりで、カニが食べたいと思ってたんです。独りで鍋なんてつまらないでしょう?」

ダイヤ「質素? 倹約ですの?」

聖良「……まあ、そんなところで。まとまったお金が要りようでして」

聖良「それより、改めて見事なステージでしたね。彼女たち、夏の大会の時よりさらに成長しています」

ダイヤ「そうですわね。夏の時は去年との体制の違いのせいか、ぎこちない部分もありましたが。今度は優勝を狙えるレベルかと」

聖良「さすがです。理亞たちもこれに続いてくれるといいんですけど」

ダイヤ「……。あ、お豆腐おいしいですわ。聖良さんもいかがです?」サッ

聖良「……いま露骨に話題を逸らしましたね?」

ダイヤ「ぅ。いえ、その」

聖良「言いたいことは分かりますよ。変に気を遣わなくていい」

4: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 21:36:24.79 ID:A+QPU2Oi
聖良「前大会、夏の北海道地区予選での敗退……理亞の痛恨のミス。前々回と地区予選で二回続けて、あの子はミスをした」

ダイヤ「……理亞さんのパフォーマンスは折り紙付きですわ。間違いなく全国でも屈指。実力は疑いようもないのですが」

聖良「問題は精神面です。繊細な子だから」もぐもぐ

ダイヤ「……理亞さんのコンディション、いかがですか? 今度の地区予選は」

聖良「夏からずっとオーバートレーニングですよ。二度もミスしたのがトラウマなんでしょう、心も体もボロボロですね」

ダイヤ「だ、大丈夫なのですか……?」

聖良「……」もぐ…

聖良「ラブライブに偶然はない。今のままで地区予選突破は不可能でしょう。そうするとあの子はもう、二度と立ち直れないかも」

5: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 21:39:47.54 ID:A+QPU2Oi
ダイヤ「忠告、してあげないのですか? 無理はするなとか、そういったことを……」

聖良「あの子も分かってはいるんです。無理をしたっていいこと無いってことくらい」

聖良「それでも自分を酷使せずにはいられない。努力は裏切らないという言葉に縋って、ただただ練習に明け暮れている……」

ダイヤ「努力は裏切らない、ですか。その言葉、あなたはよく使いますわね」

聖良「座右の銘のようなものです。その影響か、あの子もよく使いますよ」

ダイヤ「……あなたと理亞さんは、違いますわ」

聖良「そうですね。……そうなんですよ。だからこれは、きっと私のせいなんです」

聖良「カッコいい姉でいようと努めてきました。あの子の目には私の姿が、華々しく映ったことでしょう」

聖良「努力は裏切らない――その言葉を胸に勝利を掴む私の姿に、あの子は憧れたんです」

聖良「その下に幾百もの敗北が埋まっているなんて、あの子には見せないまま……あの子はこの言葉に、今も幻の私を見ている」

ダイヤ「……理解しますわ。同じ姉として」

聖良「ふふ。ルビィさんはいい子ですよね。臆病に見えて、地に足がついてる」

ダイヤ「それはどうも。贅沢を言うなら、理亞さんのようにもう少し言うことを聞いてくれても良いと思うのですが」

聖良「ふふ……ええ、あの子は真っ直ぐな子だから。愚直なくらいに。だから理想と現実のギャップに悩む」

6: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 21:41:33.08 ID:A+QPU2Oi
聖良「上手くいかない自分が情けなくて、後ろめたくて、そんな自分を振り払うためあの子は日々努力する……」

聖良「その結果、積み上げた努力はそのまま彼女の重圧になる。努力したのに報われないのが怖い、と」

ダイヤ「……疑問ですわ。そこまで理亞さんを理解していながら、なぜ今日まで手をこまねいているのか」

ダイヤ「こんなところで鍋をつつくより前に、あなたにはすべきことがあるのでは?」

聖良「最近のことです、気がついたのは。最初に違和感を覚えたのは今年の夏の地区予選の後」

聖良「あの子がひとりで立って歩き、ひとりで自分の夢を追い始めてからのこと……あまりに遅い気付きで、我ながら情けないです」

聖良「しかし。いえ、だからこそ。すべては私が私の鈍感さのせいで、あの子に植え付けてきた種だとしても」

聖良「あの子はもう、あの子の道を歩んでいる。あの子自身が築き上げてきたものがある。あの子だけの――プライドがある」

聖良「それを姉の過保護で踏み潰すなんてこと、してはならないと。そう思います」

ダイヤ「……そう悠長なことを言っていられる状況ではないのではありませんか。北海道の地区予選、もう目の前ですわ」

ダイヤ「このままでは二度と立ち直れないかも、そう言ったのはあなたでしょう。もはや、一刻の猶予もない」

聖良「――そのための今日です。この鍋パーティは、そのために企画しました。あなたの助けが欲しいんです」

ダイヤ「え……?」

7: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 21:43:07.81 ID:A+QPU2Oi
聖良「私はあの子に手出しできない。でもだからと言って、放っておいてはいけない。あの子の心はまだ、成長しきっていないから」

聖良「だから、お願いですダイヤさん。みなさんの力を貸してください。あの子がもう一歩前へ進めるように――そして」

聖良「もう一回り、大きく成長できるように……!」

聖良「私じゃあない。あの子自身がスクールアイドルを通じて培ったものこそが必要なんです――努力は、裏切らないのだから!」

ダイヤ「力を貸せ……? 具体的には、何を」

聖良「――お金、貸してください」

ダイヤ「はぁ?」

聖良「頑張って溜めたんですが、人数分はさすがに無理ですよ。開き直って鍋に回してしまいましたし」

聖良「カニ、東京で良いのを買おうとすると高いですね」もぐもぐ

ダイヤ「……あの。とりあえず、詳細をお話し頂けますか……?」

8: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 21:44:29.57 ID:A+QPU2Oi
――――
――

~北海道、函館某所~

理亞「ワン……ツー……スリー……フォー……」ハァ、ハァ…

理亞(今年も、12月がやって来た)

理亞「ワン……ツー……スリー……フォー……」ゼェ、ゼェ…

理亞(1年前の12月のことを、よく覚えてる。たぶん一生、忘れられない12月)

理亞(とても悔しい思いをした。とても大切な日々を過ごした。とても大切な、曲を歌った)

理亞「ワン……ツー……スリー……フォー……」フー…フー…

理亞(あの12月から半年経って、夏になった)

理亞(姉様と離れて、新しいメンバーとスクールアイドルをはじめて。少しは成長できたかと、思ってた)

理亞(……でも。思ってた、だけだった)

9: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 21:46:02.23 ID:A+QPU2Oi
理亞(前回の北海道地区予選。また、私はミスをした。また私のせいでメンバーに迷惑をかけた)

理亞(姉様だけじゃなく、新しい仲間たちにまで、私のせいで。次に同じことは、絶対に出来ない……だから)

理亞「ワン……ツー……ス、――あっ!?」ズルッ ドサ…

理亞「い、たた……。危ない。足、くじくところだった……」ハァ、ハァ

理亞「いま何時――23時前か。まだやれるかな。……頑張らなきゃ。努力は、裏切らないから。すー……はー……、よし」

理亞「ワン……ツー……スリー……フォー……」

理亞(努力は裏切らない。姉様がよく言ってた。私もこの言葉が好き)

理亞(信じていれば頑張れる。くじけそうになっても力をくれる。努力すればいつかきっと――姉様のようになれるって)

理亞(だから、私は負けない。どんな苦しい練習にも耐えられる)

理亞(私が二度もミスをしたのは、努力が足りなかったから。もっと頑張れば、きっと。きっと……)

10: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 21:47:07.38 ID:A+QPU2Oi
理亞「ワン……ツ、――あっ!?」ズルッ

理亞(しまった、また――受け身……だめっ、身体が上手く動かな――、)

「わっと。……あんまり無理すると危険よ?」トサッ

理亞(誰かに、受け止められた。だれ――あたたかい。この感じは)

理亞「ねえ、さま――?」


鞠莉「ホワット?」


理亞「……いや。え」

理亞「小原鞠莉、さん……?」

鞠莉「ハーイ、久しぶり。やっぱり函館の夜は寒いわね、イタリアも相当だけど」

11: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 21:48:19.13 ID:A+QPU2Oi
理亞「え、な、何で……ここに」

鞠莉「年末くらい日本に帰ろうとは思ってたの。ちょっと予定より早いけど、まぁいいかなって」

理亞「そうじゃなくて……」

鞠莉「……お世話にはなったし、ね。それに通話越しとはいえ、あのプライドの塊に頭まで下げられちゃったら」

理亞「え?」

鞠莉「何でもない。それより練習、そろそろ終わりにしたら? もう遅いし、危ないよ?」

理亞「……もう少し、やっていく」

鞠莉「そう? 意味ないと思うけどなぁ」

理亞「っ、……そんなことない」

鞠莉「あなたがそう言うなら構わないけど。ま、せいぜい気が済むまで頑張ってくだサイ?」

理亞「……邪魔がしたいんだったら帰って」ギロッ

鞠莉「ワオ、ベリーアングリィ。怒ったらダメよ、アイドルはいつもスマイル♪」

12: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 21:49:21.25 ID:A+QPU2Oi
鞠莉「あ。さっき缶コーヒー買ってきたの。はい、これはあなたの分。暖かいわよ?」

理亞「いらない」

鞠莉「そう? ざーんねん」カシュッ ゴクゴク

鞠莉「うわ、まず……。あの、もう1本はお願いだから受け取って」

理亞「――さっきから何なの!? 帰ってって言ってるでしょ!」

鞠莉「……さっき転んだ時、危なかったって気付いてるでしょ? 本当に怪我するまで続ける気?」

理亞「っ」

鞠莉「地区予選が目の前のこのタイミングで怪我したら、もうおしまい。そうなりたくはないでしょう?」

鞠莉「休んだ方がいいよ。優勝経験者からのアドバイス。昔。脚を痛めたことも、ある。――聞いた方がいいとは思わない?」

理亞「……でも、練習しなきゃ」

鞠莉「いま練習すれば、ラブライブで優勝できる?」

理亞「……きっと。努力は裏切らないから」

14: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 21:51:09.97 ID:A+QPU2Oi
鞠莉「先輩として言っておいてあげる。どんなに努力したって、その量と結果が比例する訳じゃないよ」

鞠莉「例えば、どうしても守りたかった学校も守れなかったり、ね」

理亞「……そんなの、あなたたちの努力が足りなかったんでしょ」

鞠莉「ふーん……そう。じゃあ、あなたのお姉さんも同じね」

理亞「え?」

鞠莉「だって、あなたたち、ベスト8と地区予選落ちでしょ? 聖良も偉そうに言う割に、努力が足りてなかったのねぇ」

理亞「なっ――! ね、姉様を馬鹿にしないで! あれは姉様のせいじゃない!!」

鞠莉「あなたが言ったことでしょう? 努力は裏切らない、努力すれば優勝できる。聖良は優勝できた?」

理亞「そっ、それは……あれは、私が……っ!」

理亞「私が……!!」

鞠莉「……ソーリィ。大人げなかった。でも、あなたの言葉は本当に腹が立ったから。これくらいは許してちょうだい」

鞠莉「みんな必死だったの。あなたたちと同じように」

理亞「……っ」

15: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 21:52:40.60 ID:A+QPU2Oi
鞠莉「話が逸れちゃった。ま、とにかく根を詰めたってダメだってコト。今日は諦めて帰りなさい?」

理亞「……それなら、あなたはどうするの」

鞠莉「ん?」

理亞「努力して、努力して、努力して。それでも叶わないなら、あなたは」

鞠莉「……んー」

鞠莉「やりたいと思ったことをする。マリーなら、それだけかな」

理亞「逃げるって、こと?」

鞠莉「ふふ――帰りましょ? レンタカー借りてるの。送ってくわ」

理亞「……」

鞠莉「はい缶コーヒー。喉、乾いてるでしょ?」

理亞「これ飲んだら、眠れなくなる」

鞠莉「くすくす……お子ちゃまね」

理亞「……うるさい」

16: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 21:53:03.05 ID:ASyUasBx
理亞「うっっっざ!!!すぐ曇るくせに!」

17: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 21:54:25.80 ID:A+QPU2Oi
――――
――

翌日 ~函館聖泉女子高等学院~


理亞「――はい、今日はここまで。お疲れ様」

茶髪「はぁぁ、今日もつっかれたぁ……」

理亞「ちゃんと汗は拭いておいて。冷えるから」

黒髪「……理亞ちゃん。一緒に帰ろう?」

理亞「私はもう少しやってく。あなたたちは帰って」

黒髪「ぁ……」

茶髪「……理亞ちゃん。ちょっと無理しすぎだよ。地区予選も近いんだし、そろそろ身体を休めた方がいいんじゃないかな」

理亞「別に大丈夫」

茶髪「っ、オーバートレーニングだってこと、気付いてるでしょ。そんな無理したっていいことないって、分かってるんでしょ?」

理亞「……」

19: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 21:55:54.18 ID:A+QPU2Oi
黒髪「ね、ねえ。今日は帰ろうよ。今日がんばったって、すぐ何かが変わるわけでもないんだから」

理亞「……あなたたちもそう言うの?」

黒髪「え?」

理亞「やっても無駄だって、そう言うの?」

茶髪「そこまでは言わないけど、でも……」

理亞「……もし無駄だったとしても、私は他の方法を知らないから」

理亞「練習することしか知らない。勝つために出来ることなんて、それしか知らない。それだけしか……っ」

理亞「他に方法があるなら教えてよ。私、何だってやるから……勝てるのなら、何だって……」

黒髪「理亞ちゃん……」

20: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 21:57:15.88 ID:A+QPU2Oi
理亞「……ごめん。心配してくれてるって、分かる。でも、だから、ごめん」

理亞「もし次もミスしたら、2人にどんな顔して会えばいいか、分からないから……練習させて」

茶髪「じゃ、じゃあ、私も練習する! 一緒に!」

黒髪「わ、私も!」

理亞「……分かった」

理亞「無理は、しないで」







茶髪「げほっ、ごほっ……ぅぷっ!?」

黒髪「こー……ひゅー……こー……」

理亞「はぁ、はぁ――ふー……ごめん。やっぱり無理、させた」

理亞「ドリンク飲んで。汗も拭かなきゃ。……少し休んだら、今日は帰った方がいい」

21: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 21:58:31.49 ID:A+QPU2Oi
黒髪「こほっ……、理亞ちゃん、毎日こんなことしてるの……?」

理亞「うん」

黒髪「……おかしいよ」

黒髪「私、3人でスクールアイドルするの、楽しいよ。練習は大変だけど、それも楽しいって、思ってた。――でも」

黒髪「これは、違う。違うよ……。こんな自分を痛めつけるだけの練習は、おかしいよ」

理亞「……」

黒髪「ねえ、理亞ちゃん。理亞ちゃんは、楽しい? こんな毎日で、スクールアイドル、楽しいの……?」

理亞「……楽しくない。苦しいに決まってる」

黒髪「っ! じゃあどうして!?」

理亞「頂点の景色が見たい。A-RISEやμ'sがいた場所の。姉様が夢見た場所の。Aqoursが登り詰めた場所の」

理亞「その輝く景色を見てみたい――あなたたちと、3人で」

黒髪「……」

22: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 21:59:38.94 ID:A+QPU2Oi
理亞「努力は裏切らない。辛くても、苦しくても、耐えた先に夢見た景色が待っていてくれるなら。私は――」

茶髪「……私、帰る」

理亞「うん。お疲れ様。ゆっくり休んで」

茶髪「……バカみたい。3人一緒で、今が一番楽しいんだって、そう思ってたのに」

茶髪「本当――バカみたい」フラフラ…

理亞「……」

黒髪「私は、もう少しここにいてもいい? 練習はもう無理だけど……」

理亞「そう。なら、私のコートも羽織っておいて。寒いから」スッ

黒髪「ありがとう」

理亞「……前は、ミスしてごめん。次は大丈夫だから。きっと、きっと。大丈夫なようにしておくから……」

黒髪「そんなこと、私たちはお願いしてないよ……」

理亞「私が、そうしたいの」クルッ、タンッ…スタッ、タッ、トッ、スタッ

 スタッ、トンッ、クルッ、スタッ、タンッ…
 スタンッ…

23: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:00:39.55 ID:A+QPU2Oi




黒髪「だ、大丈夫、理亞ちゃん……」

理亞「だい、じょうぶ……それより、帰ろう。閉門しちゃったし、いつまでも校門にいたら怒られる……」フラフラ

黒髪「……もしかして帰ってから、また練習する気じゃないよね?」

理亞「……。今日はもう休む」プイッ

黒髪「はぁ……理亞ちゃんって嘘が下手だよね」

理亞「ん……」

黒髪「ねえ。そんなに勝ちたいの? そんなになってまで、勝ちたいの……?」

理亞「……バカな質問」

24: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:01:31.04 ID:A+QPU2Oi
理亞「勝ちたくなければ。スクールアイドルがしたいだけなら。ラブライブを目指す必要なんてない」

黒髪「……私は、それでもいい。ラブライブ、優勝したくないって言ったら嘘になるけど、そんなに無理するくらいなら、それでもいいよ」

黒髪「その頂点の景色って、そんなに大切なものなの? ……私には分からない」

理亞「大切だよ。だって、遊びでやって来たんじゃ、ないんだから」

黒髪「っ、遊びじゃないよ! 私だって真剣に――、」

 ――ブロロロロロ…!

理亞「……車だ。下がって。――ん、あれ? なんかあの車、近くな――むぐっ!?」ガシッ

黒髪「理亞ちゃん!?」

「イェーイ、ハイエーーーース!! 地方のJKを誘拐、これ1回やってみたかったの!」ギャギャギャギャギャ!!

「さあて。大人しくしてもらおうかなーん?」

「ご機嫌よう! 理亞さんのこと、少しお借りしますわね!」

 ――ブォォォォォン!!

黒髪「り、理亞ちゃんが攫われた……!? いや、でもさっきの人たちって」

黒髪「Aqours……?」

25: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:02:51.38 ID:A+QPU2Oi
 ブロロロロ…

理亞「むーっ、むぐーっ!」

果南「……ねえ。思いっきり理亞ちゃんを押さえつけておいて何だけどさ」

果南「冷静になってみるとこれ、凄いことしちゃったんじゃない?」

ダイヤ「……ええ。冷静になってみると普通に犯罪ですわね、これは」

鞠莉「HAHAHAHAHA!! 再会のテンションって怖いわね、まさか2人とも冗談にノってくるとは思わなかったわ!」

ダイヤ「笑い事ではありませんわよ! 鞠莉さんの口車に乗せられて大変なことに……!」

果南「り、理亞ちゃんごめん! さっきの子に通報しないようにお願いして!」

理亞「けほっ、けほっ。……誘拐されたって言えばいいんですか」

果南「そうじゃなくて! いや、事実そうなんだけどさ!」

鞠莉「やっぱりあなたたちって最高! これでだけでも日本に帰ってきた甲斐があるってものね!」

ダイヤ「あなたはお黙りなさい!」

理亞「……何なの、本当に」

26: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:04:00.83 ID:A+QPU2Oi
鞠莉「ふふ。私たちこれからディナーなの。地元民オススメの店とか案内してくれない?」

理亞「……何が食べたい?」

鞠莉「ジンギスカン!」 果南「お寿司かな」 ダイヤ「スープカレーを」

理亞「はぁ……まずは意見を統一して。その間に誘拐じゃないって説明しておくから」







鞠莉「ジン♪ ジン♪ ジンギスカーン♪」ジュゥゥゥゥ

果南「まぁこっちも美味しそうだしいいか。……あれ。そう言えばダイヤって羊肉は大丈夫なの?」

ダイヤ「好んで食べるものでないことは確かですが。問題なく食べられますし、じゃんけんで決めたことに異論はありませんわ」

理亞「……あの。帰らせてほしいんだけど」

鞠莉「車はマリーが運転するのよ? 私たちが食べ終えるまでは帰れまセーン」

27: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:05:11.22 ID:A+QPU2Oi
ダイヤ「理亞さんも夕食はまだでしょう? 先ほどの詫びということで、支払いはこちらで持ちますので食べて行ってくださいな」

果南「そうそう。運動した後はちゃんと食べないと大きくなれないよー?」

理亞「大きく……」ジー

理亞(確かに2人は大きい。2人、は)

ダイヤ「……理亞さん。何かいま失礼なことを考えていませんか」

理亞「……別に」

鞠莉「ん、そろそろ焼けたかな。理亞、あーん♪」

理亞「お、置いておいて。自分で食べるっ」

鞠莉「もう、つれないんだから」クスクス

理亞「……それで。何のつもりなの?」

果南「ん?」

28: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:06:11.27 ID:A+QPU2Oi
理亞「気まぐれな人がひとり函館にやって来た、ってことなら分かる。でもあなたたち3人が揃うなんて偶然じゃない」

理亞「しかも北海道地区予選の直前。……何のつもり? 私を笑いに来たの? 2度もミスした私が、3回目もミスをするって?」

鞠莉「ワオ、ひどい被害妄想」もぐもぐ

果南「気難しい子だとは思ってたけどねぇ」むぐむぐ

理亞「私は真剣に話をしてるの!」

ダイヤ「……笑いなどしませんわ。あなたという人物を知っていて笑うことの出来るスクールアイドルなど存在しない」

ダイヤ「そんな者がもしいたのなら、わたくしはそれをスクールアイドルとは認めません」

果南「まぁ私たちは元だけどね」

理亞「……なら何をしに来たの」

果南「セラリーがどうしても、ってさ」

理亞「セラ……あぁ、姉様。――姉様?」

29: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:07:54.03 ID:A+QPU2Oi
ダイヤ「わたくしと聖良さんが東京で親交があるのはご存知でしょう?」

ダイヤ「……あなたのこと、とても気にかけていましたわ。どうか力になって欲しい、と」

理亞「姉様が……そう」

理亞「ダメだな、私……姉様にまで心配かけて。……ダメだって、思われてるんだろうな」

理亞「あの。姉様は、今は」

ダイヤ「必要以上にあなたを甘やかしてしまうのが怖いのでしょう。我々に任せると。でも、地区予選には来ますわ」

理亞「地区予選、来るんだ……。カッコ悪いところ、見せられないな……本当に、失敗できない」

果南「怖い? 失敗するの」

理亞「……当たり前でしょ。あんな思い、もうしたくない。だから、そうならないために練習するの」

30: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:08:57.04 ID:A+QPU2Oi
果南「ねえ、理亞ちゃん。ちょっと自分の話をするんだけどさ」

果南「実は私たち、ラブライブに優勝したんだよね」

理亞「……それ、嫌味?」

果南「怖くなかったよ」

理亞「……?」

果南「怖くなかった。地区予選も、決勝も。失敗したらどうしようなんて思わなかった」

理亞「……そう思わないのは、あなたがよっぽど鈍感だからでしょ。私はそんなに開き直れない」

理亞「失敗は、誰にでもある。不安は消えない」

鞠莉「そうね。失敗は誰にでもある。それを限界まで減らすために事前に計画を立てて、手順を整えて、確認をして、事に臨む……」

鞠莉「その工程をスクールアイドルに当てはめるなら、それは練習ということになるんでしょうね」

理亞「だから練習するの。失敗しないように」

鞠莉「してるじゃない。あなたは練習を、嫌と言うほど。それじゃあ足りない?」

31: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:10:08.41 ID:A+QPU2Oi
理亞「足りない。100%なんかないから」

鞠莉「んー。あなたの言うように努力は裏切らないのだとしたら、それは100%ってコトじゃない?」

理亞「……っ!」

理亞「それ、は……」

鞠莉「……矛盾に気が付いた?」

鞠莉「あなたはね、理亞。努力は裏切らないという言葉をあまりに過信していて――それでいて何も信じてないの」

鞠莉「ちゃんと考えなさい。あなたたち姉妹が胸に刻んだ、その言葉の意味をもう一度。聖良はあなたにそれを望んでる」

理亞「言葉の意味……?」

32: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:11:11.54 ID:A+QPU2Oi
理亞「……努力は、裏切らない。でも100%じゃ、ない……望んだ結果が得られるとも、限らない」

理亞「……分からない。それなら、どうすれば姉様に、あなたたちに追いつけるの。どうすれば、仲間の期待に応えられるの」

理亞「私がやってきたことは全部――無駄、だったの……?」ジワッ…

ダイヤ「――無駄などではありませんわ。あなたの努力は無駄ではない、絶対に」

理亞「……でも」

ダイヤ「理亞さん。あなたたち姉妹が、努力は裏切らないという言葉を胸に生きてきたように」

ダイヤ「わたくしにも常に心に留めている言葉がありますわ。どんな言葉か、お分かりになりますか」

理亞「……ルビィかわいい」

ダイヤ「違います」

33: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:12:47.25 ID:A+QPU2Oi
ダイヤ「黒澤家にふさわしいのは勝利のみ――わたくしは周囲からそう望まれ、わたくし自身もまた、そうあろうと努めてきました」

ダイヤ「しかし、実際に勝利に彩られた人生だったかと言うと、答えは否ですわ。これからもそうでしょう」

ダイヤ「勝利を追い求める者の人生は、いつだって敗北に満ちている。わたくしもそうですし、聖良さんも、そう」

理亞「姉様、も?」

ダイヤ「ええ。あなただって同じなのでしょう?」

ダイヤ「あなたが歩んできた道の中にあるのは、膨大な量の敗北と、たった一握りの勝利のはず」

理亞「……私は、負けてばかり。勝ったことなんて……」

ダイヤ「ふふ――理想が高いんですのね」

理亞「え……?」

ダイヤ「高すぎる理想を仰ぎ、なお折れぬその心。誇るべきことかと」

理亞「……負け続けるなんて、カッコ悪いだけでしょ」

ダイヤ「負け続けたということは挑み続けたということですわ。失敗が怖いと、あなたは仰いましたわね?」

ダイヤ「しかし、怖くても格好悪くても、それでも歯を食いしばってきた……無駄なわけがありません」

34: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:13:37.12 ID:A+QPU2Oi
理亞「……」

鞠莉「……ダイヤは喋り過ぎね。ホンっト、年下相手には甘いんだから」

果南「ね。これじゃ聖良に怒られちゃうよ」

ダイヤ「い、いいではありませんか、これくらい……」

果南「ま、とにかくさ。肩肘張る前に胸張ってこうって、そういうことだよ。細かいこと考えるのは終わった後でも十分じゃん」

鞠莉「そうそう。とにかく今は、目の前のジンギスカンを楽しめばオールオッケー!」

ダイヤ「ほら、理亞さんもお食べなさいな。よく焼けてますわよ」ヒョイヒョイ

理亞「……私は」

35: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:14:48.22 ID:A+QPU2Oi
鞠莉「ねえ、理亞。あなたの誕生日、12月だって聞いた気がするけど合ってる?」

理亞「え、あ、うん。12月12日」

鞠莉「ワオ、過ぎてる。……ま、いいか。明日は土曜日だけど、学校で練習?」

理亞「うん」

鞠莉「そう。なら期待してて。バースデーには遅れちゃったけど明日、素敵なプレゼントを用意してあるの」

理亞「プレゼント……?」

ダイヤ「聖良さんが借金を作ってまで用意したものですわ。きっと喜んで頂けるかと」

理亞「?」

果南「詳細は明日になってのお楽しみ。――さ、食べよう! お肉焼け過ぎちゃうよ」

36: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:15:47.20 ID:A+QPU2Oi
ダイヤ「さあ理亞さん。どんどんお食べなさい」ヒョイヒョイ

理亞「いや、そんな山盛りにされても……」

果南「ダイヤ。理亞ちゃんはダイヤの妹じゃないんだからさぁ」

鞠莉「しばらくルビィに会えてないものね、すぐ妹欠乏症を発症するんだから」

ダイヤ「そ、そういう訳ではありませんわよ!」

鞠莉「どうだか。ねえ、理亞。試しにダイヤのこと、お姉ちゃんって呼んであげて? きっとデレッデレになるから」

果南「あはは。それ面白そう」

理亞「え、えっと……」

ダイヤ「人をシスコンの変態みたいに言わないで頂けます!? 理亞さんが困っているでしょう!」

鞠莉「あなたがシスコンじゃなければ誰がシスコンになるって言うのよ」

果南「年下に甘えられるとすぐ落ちるもんね。私、ダイヤにそんな優しくしてもらったことないよ」

ダイヤ「で・す・か・らっ! わたくしはシスコンではないと言っていますのに!」

 アハハハハ!

理亞「……」もぐ…

37: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:16:28.57 ID:A+QPU2Oi
理亞(お肉の焼ける音。のぼる煙。香ばしく焦げたタレのにおい。年上ばかりに囲まれた、賑やかな談笑)

理亞(あまり得意じゃない空気。でも今のこの空気は――嫌じゃない)

理亞(この人たちは、私を認めてくれている。私に、誇っていいって、胸を張れって、そう言ってくれている)

理亞(……でも分からない)

理亞(私に誇れるものなんて無いはずなのに。この人たちは私の何を認めてくれているんだろう)

理亞「……おいしい」もぐもぐ

理亞(分からなくても、誰かに自分を認めてもらえる空間は、居心地がいい)

理亞(努力が報われないんなら。……私はそろそろこの空間に甘えてしまっていいのかな)

理亞(もう十分やったろうって、立ち止まっても――)

理亞「……っ」

理亞(でも、諦められない。諦めたくない。この想いはどうしたらいいの。どこにその答えがあるの)

理亞(誰か、答えを教えてよ――姉様)

38: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:30:14.89 ID:A+QPU2Oi
――――
――

翌日 ~函館聖泉女子高等学院~

理亞「……」プルプル


『あなたのお仲間は預かったわ。返してほしければ五稜郭タワーまで来なサーイ!
  ――怪盗マリーより チャオ♪』


理亞「プレゼントって、これのこと……!? また誘拐とか、本当に通報してやろうかっ」クシャッ

理亞「無視してもいいけど、練習もしなきゃだし放っておけない……五稜郭タワー、か」

理亞「走れば20分くらいかな。しょうがない――行こう!」グッグッグ… タタッ

39: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:31:23.07 ID:A+QPU2Oi
タッタッタッタッタ…
函館聖泉女子高等学院(八幡坂) → 五稜郭タワー(約5.2km)


理亞「さて。五稜郭着いたけど、ここに何があるんだか……」

「――くっくっく。来たわね、リトルデーモン10号……待ちわびたわ」バサッ

理亞「! その声は――善子!?」

善子「ヨハネよ」ギランッ

理亞「また観光名所の真ん中でなんて怪しい格好を。いや、まぁ、それはいいとして」

理亞「……あなたも、姉様に言われて来たの」

善子「まあね。……あー、いえ」

善子「私の意思よ。そうしたいと思ったからきた。会いに来たのよ、あなたに」

40: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:33:07.82 ID:A+QPU2Oi
善子「さて。あなたのお仲間はマリーが預かっているわ。残念だけどここにはいない」

善子「あなたは、次に指定された場所へ向かわなければならないの」

理亞「……次はどこ?」

善子「私との勝負に勝てば答えてあげる――この袋の中のくじから勝負の内容を決めて、ね」ガサッ

理亞「あぁ、そういう遊び……付き合ってられないんだけど」

善子「拒否権はないわよ。従わなければ、仲間の命はないと思いなさい……」クックック

理亞「危害を加える気なんかないくせに……」

理亞「はぁ……分かった。さっさと勝負の内容を決めて」

善子「ふっ、よく言ったわ。――さあ、何が出るかしらね。個人的にはゲーセンで勝負とか出てくれると嬉しいけど」ゴソゴソ

善子「よっ――!」


 『腕相撲』


善子「」

理亞「……なるほど」

41: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:37:09.67 ID:A+QPU2Oi
善子「ふ、……ふっ。ま、まぁスクールアイドルはじめてから筋力は付いたし?」

善子「この堕天龍サブミッションの使い手であるヨハネが後れを取るはずがない……わよね?」

理亞「じゃあ、やろうか」スッ

善子「くくく。ヨハネの身体強化魔術の力を思い知らせてやるわ。はっ! ――ん? お、あ、あれ……?」グ、グググ…

理亞「……」

善子「と、とぉりゃぁぁぁっ! でぁりゃぁぁぁっ! こぉなくそぉぉぉぉっ! ……うっそ全然動かないんだけど!?」

理亞「……ねえ。これもう私の勝ちでいいでしょ」

善子「ま、まだ決着はついていないわ……! 勝敗も決めずにここを通れるなんて思わないこと――、」

理亞「本気でやればたぶん折れる」

善子「私の負けでいいです」

理亞「ん」スッ

42: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:38:05.42 ID:A+QPU2Oi
善子「……いや、なんて言うか」プランプラン

善子「どんな筋肉してるのよ、あなた……」

理亞「鍛えてるから。さあ、次の目的地を教えて」

善子「あーもう……函館港よ。そこで次の刺客があなたを待っているわ。あとこの、くじの入った袋も持って行きなさい」

理亞「やっぱりそういう趣旨か……函館港、ここからなら走って20分かな」

善子「それにしてもあなた、強いわね。人の身でありながらこのヨハネをくだした偉業、誇っていいわよ」

理亞「善子みたいな華奢なのに腕相撲で勝っても嬉しくない。……あなたには、ライブで勝ちたい」

善子「……餞別よ。私に勝った褒美。持って行きなさい」プスッ

理亞「ちょ、勝手に髪に刺さないで。……カラスの羽根?」

善子「堕天使の羽根。私の魔力が込めてある。ま、お守りよ」

理亞「加護なさそう……」

43: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:39:41.61 ID:A+QPU2Oi
善子「……ねぇ、理亞。ひとつだけ、聞かせてもらうわよ」

理亞「ん?」

善子「あなたは、運命というものを信じるかしら」

理亞「運命……? なに、それ。どういうつもりで言ってるの?」

理亞「それって、私がミスしたのも、自分たちが優勝したのも、運命だとでも言いたいの」

理亞「あなたまで、私がやってきたことを無駄だって……!?」

善子「そうじゃない。私はあなたがどう考えているかを聞いているのよ」

理亞「っ、私は運命なんて信じない! 私の結果は私だけのものっ、他の誰かが決めたことじゃない!」

善子「そうね。……ええ。それなら、きっと大丈夫よ」

理亞「え……?」

44: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:40:44.55 ID:A+QPU2Oi
善子「あなたの未来はあなただけのものよ。理亞、その言葉を忘れないで」

善子「努力なんて不確かなものがあなたの未来を決めるわけじゃない。未来を決めるのは――努力したあなた自身なんだから」

理亞「それって……」

善子「このヨハネに腕相撲で勝ったこと。それは偶然でもなければ奇跡でも運命でもない、必然の未来――」

善子「征きなさい、リトルデーモン10号――鹿角理亞! あなたはもう空を翔べるのよ、いつまでも地を這ってはいられない!」

理亞「善子……」

善子「アキバドームで、待ってるわよ」ニッ

理亞「……うん」

理亞「きっと、会ってみせる。アキバドームのステージで、善子と。あなたたちと……!」タタタッ

善子「……私はヨハネだってのに。まったく、さっきのもどこまで伝わってくれたんだか。ま、後はみんなに任せましょうか……」

45: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:42:03.66 ID:A+QPU2Oi
タッタッタッタッタ…
五稜郭タワー → 函館港(約4.6km)


理亞「さて……函館港って言っても広いから困る。どこに誰がいるんだか――ん?」タッタッタ

「はっはっは、よく来たな! 待っていたぞ理亞ちゃん!」

理亞「その声……そう。港だから曜さんかと思ってたけど、あなただったの」

千歌「海、いいよね! 内浦の海ももちろん好きだけど、函館の海も好き。……寒いけど」

理亞「で? このくじをあなたに引いて貰えばいいの? 練習もあるし、早く終わらせたいんだけど」

千歌「くじ? 何のこと?」

理亞「え? このくじを引いて勝負の内容を決めるんでしょ。善子の時はそうしたけど」

千歌「そうなの? 勝負の内容は好きに決めることになってるけど、何で善子ちゃんは――、あ。そっか鞠莉ちゃんの悪ふざけだ」

46: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:43:17.41 ID:A+QPU2Oi
千歌「ちょっとそのくじ見せて。……ほら。くじの中『ダンスゲーム』ばっかり。イカサマくじだよ、これ」

理亞「え!? あの、善子とした勝負は腕相撲なんだけど」

千歌「さすが善子ちゃん。この中にもし腕相撲が混ざってたら、それは引いちゃうよね」

理亞「このくじ何十枚とあるけど、ここからたった1枚の腕相撲を引いたの……?」

千歌「まあ善子ちゃんだし。――それより! さあ、私と勝負しよう!」

理亞「……あなたとはどんな勝負をするの」

千歌「ふっふっふ。いろいろ考えたんだけどね、やっぱりここは千歌の成長もどーんと見せつけておきたいと思いまして!」

千歌「スクールアイドルクイズ対決を申し込むのだ!」

47: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:44:23.78 ID:A+QPU2Oi
理亞「クイズ?」

千歌「これからクイズ魔人がスクールアイドルに関する問題を出すから、それを早押しで答えるの!」

ダイヤ「どうも。クイズ魔人ですわ」

理亞「わっ。いたんだ……」

千歌「早押しのセットも鞠莉ちゃんが用意してくれています! ほらこの通りっ」ピンポーン!

理亞「フットワーク軽すぎでしょ、あの人……」

千歌「問題は5問! 先に3つ正解した方が勝ちね!」

理亞「はぁ~……どうせ拒否権はないんでしょ。その勝負、受ける」

千歌「そう来なくっちゃ! じゃあセットの前に座ってね」

ダイヤ「では。さっそく始めさせて頂きましょう。第1問、まずは小手調べですわ」

理亞「……」 千歌「……」

48: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:45:39.25 ID:A+QPU2Oi
ダイヤ「我らがスクールアイドルの生ける伝説μ'sが、かつてニューヨークへ遠征に出たことは有名ですが――」

千歌「えっ。μ'sってニューヨークに遠征してたの!?」

理亞「……知らなかったの、あなた」

ダイヤ「で・す・が!!」

ダイヤ「そのニューヨークでμ'sの頭脳たるエリーチカが、書物で得た知識をメンバーに披露した橋があります。その橋とは!?」

千歌「え。な、なにそれ。ニューヨークの、橋だよね。本に載ってる。橋……本。橋本?」

理亞「……はぁ」ポチッ

ダイヤ「はい、理亞さん。どうぞ」

理亞「ブルックリンブリッジ」

ダイヤ「正解!!」ピンポンピンポーン!!

千歌「よ、よく知ってるね、理亞ちゃん……っていうか、ブルックリン、ブリッジ? って、どこにあるの」

理亞「え……えと。ニューヨーク」

千歌「おぉ……!」

ダイヤ「あなた、正気ですの……?」

49: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:47:56.14 ID:A+QPU2Oi
ダイヤ「ま、まぁ、いいでしょう。少し、千歌さんのことを見くびっていました。次は簡単な問題にさせて頂きますわ……」

理亞「公平性に欠ける……。まあ、いいけど」

ダイヤ「では第2問」

理亞「……」 千歌「……」

ダイヤ「長き歴史に渡るラブライブ!ですが。その栄えある第一回ラブライブ!の優勝グループと言えば!?」

千歌「よっし、これなら分かる!」ポチッ

理亞「しま、遅れた!」

ダイヤ「はい、千歌さんどうぞ!」

千歌「――もちろんμ's!!」

理亞「はぁ?」 ダイヤ「……なんと」

千歌「え? ……あっ!? ち、違う、ごめん今の無し!! μ'sじゃない、第一回はμ'sじゃないよ!!」

千歌「ダイヤちゃんごめん、千歌は答え知ってるんだって、ねぇ!?」

ダイヤ「ぶっぶー、ですわ!! なんと、なんと嘆かわしい!」

50: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:49:09.44 ID:A+QPU2Oi
ダイヤ「ラブライブの歴史そのもの、全スクールアイドルの始祖とも言える元祖王者! その名前を間違えるとは言語道断!!」

ダイヤ「あなたにもはや、回答権などありませんわよっ!!」

千歌「分かってるよぉ、勢いで答えちゃっただけなのぉ……!」

理亞「まったく……A-RISE」

ダイヤ「はぁ。正解ですわ」ピンポンピンポーン!!

千歌「知ってたのにぃ……」

ダイヤ「……さて。これで2問が終わりました。至らぬ後輩へはわたくしから指導をしておくとして」ギロッ

千歌「うっ」

ダイヤ「次が第3問目。ここを理亞さんが取れば勝負は決まりです……ですので、理亞さん」

理亞「?」

ダイヤ「あれでも千歌さんはAqoursのリーダーです。我々にもメンツというものがありますわ」

ダイヤ「卑怯と罵られようが、1問くらいは正解して頂きます……次は一度、千歌さんに出題したことのある問題です」

千歌「えっ!?」

理亞「……ふーん」

51: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:50:05.76 ID:A+QPU2Oi
ダイヤ「では第3問! ラブライブ第二回決勝、μ'sがアンコールで歌った曲は『僕らは今のなかで』ですが!」

ダイヤ「曲の冒頭でスキッ――」

千歌「あっ、その問題なら―― 理亞「……」ポチッ ――えぇっ!?」

千歌「ちょ、待ってよ! 今の分かったのに!?」

理亞「待つわけないでしょ。早押しなんだから」

千歌「というか理亞ちゃん、その答え分かるの……?」

理亞「悪いけど、基本中の基本だし一般教養」

ダイヤ「……理亞さん。答えをどうぞ」

理亞「冒頭でスキップをしているのは、絢瀬絵里、東條希、星空凛、西木野真姫の4人」

ダイヤ「ぐっ……正解ですわ」ピンポンピンポーン!!

千歌「いや。2人の一般教養、おかしいよ。絶対……」

52: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:51:09.30 ID:A+QPU2Oi
ダイヤ「なんと、なんと不甲斐ない結果ですの……」

理亞「勝負にならなかった……次の場所はどこ?」

千歌「うぅ~、負けちゃったぁ……いいよ、教える。次は石川公園だよ」

理亞「微妙な距離だな……」

千歌「そこで待ってる子はかなり手強いから、がんばってね!」

理亞「ま、善子との腕相撲やあなたとのクイズと比べたら手強いのかもね」

千歌「ぐっ!? ま、まぁもともとクイズとかって苦手で。……――それに、さ」

千歌「やっぱり理亞ちゃんは詳しかったよ。スクールアイドルが大好きなんだって、よく分かる」

千歌「大好きだから、憧れる。憧れるから近づきたい――あの輝きの中に、自分も」

53: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:51:56.18 ID:A+QPU2Oi
千歌「諦めらんないんだよね。何があったって諦められない。夢中になっちゃったら、本気になっちゃったら、勝ちたいって思う」

理亞「勝ちたいですか、なんてバカ言ってた人が嘘みたい」

理亞「……私とあなたの何が違うの。普通のくせに、あなたは何で特別になれたの」

理亞「あなたの方が私より練習してるなんてこと、ないはずなのに……!」

千歌「……うん。練習の量も質もたぶん、理亞ちゃんの方が上だと思う。でも、私たちは負けないよ」

理亞「だから何でっ!?」

千歌「みんながいるから。みんなが精一杯やってきた。私は、みんなのことを信じてる。みんなが私のことも、信じてくれてる」

千歌「だから私も信じるの。0から1へ――夢中で駆け抜けてきたその道を」

理亞「信じる……?」

54: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:52:55.77 ID:A+QPU2Oi
千歌「……さあ、行って。次の子がいる場所へ。だって立ち止まれないよ――憧れちゃったら止まれない!」

千歌「次は決勝で会おう、理亞ちゃん!!」

理亞「……あなたの言っていることが分からない。でも、励ましてくれてるってことは分かる」

理亞「だから、いちおう言っておく。……ありがとう」タタタタッ

ダイヤ「――行きましたわねぇ。……言葉少なめ、どれほど千歌さんの想いを受け止めてくれたやら」

千歌「いいよ。ほんの少しでいい。あとはみんなに任せよう」

千歌「……ふふ。楽しいなぁ、スクールアイドル。もう、私も卒業かぁ」

ダイヤ「悔いのないようになさいな。応援しておりますわ。……それよりも」

ダイヤ「補習と、いきましょうか」

55: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:54:16.41 ID:A+QPU2Oi
タッタッタッタッタ…
函館港 → 石川公園(約3.7km)


理亞「ふー……着いた。さて。ここに誰がいるのか」キョロキョロ

「お。来た来た。待ってたよ、理亞ちゃん!」

理亞「……なるほど。確かに手強そうな相手」

曜「ふっふっふ。私はそう簡単には負けてあげないよ。真剣勝負であります!」

理亞「手に持ってるボール……そう。だから石川公園か」

曜「ここはバスケットのゴールがあるからね! 1on1で勝負しよう!」

56: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:54:49.94 ID:A+QPU2Oi
理亞「……ルールは?」

曜「先攻後攻の交代制。ゴールを決めるか、ボールを取られちゃったり弾かれちゃったら交代ね!」

曜「攻守1巡を1セットとして繰り返して、ゴールを決める・相手を止める、1セットのうちに両方取れば勝ちってことで!」

理亞「……分かった。それでやろう」

果南「私が審判やるよー。先攻はコイントスで決めるから、表裏選んで」

理亞「あなたもいたんだ……。じゃあ、表」

果南「おっけ。よっ、と」ピンッ …パシッ

果南「……残念。裏だね」

曜「じゃあ私の先攻だね。負けないよ!」ダンッ、ダン

57: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:55:32.19 ID:A+QPU2Oi
理亞「曜さん、バスケの経験は?」

曜「たまに遊びでやるくらいかな。理亞ちゃんは?」

理亞「体育だけ」

曜「ふふ――いい勝負に、なりそうだね!」ダッ!

理亞「!」

理亞(鋭い――!? このドリブル、バスケ部並み……!?)

理亞「くっ」バッ

理亞(ダメ、遅れた――追いつけないっ!)

曜「よっ――と」ヒュ パスッ…

果南「ゴール! ボール交代、理亞ちゃんの後攻!」ピピー!

曜「ぃよし、まずは先制!」

果南「次に理亞ちゃんがゴールできないと負けだからね。がんばって」

曜「あーっ!? 果南ちゃんどっちの味方なの!?」

果南「公平な審判だよ」

58: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:56:16.96 ID:A+QPU2Oi
理亞「……」

理亞(曜さん、全国レベルの飛び込み選手とは聞いてたけど、こんなに……それにこの人、Aqoursの衣装も担当だって)

理亞(なんて多才な人。……だから。ちょっとだけ、腹が立つ)

理亞「ふーっ」

理亞「――私も決めればいいだけでしょ」ギロッ

曜「……いいね。千歌ちゃんや果南ちゃんがしない眼だ――アスリートの眼」

曜「遊びでやるスポーツももちろん楽しいけど。……これも楽しいよ」

果南「はい、理亞ちゃん。ボール」

理亞「どうも。……さて」ダンッ、ダンッ

理亞(そうは言っても、どうしたものかな)

曜「……」キュッ、キュキュッ

理亞(隙が無い、な……。本当、バスケ部を相手にしてる気分)

59: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:57:08.26 ID:A+QPU2Oi
理亞(そもそも、私はあんまりバスケには向いてない。というか球技って苦手。ただ走ったり跳んだりするだけなら楽なのに)

理亞(それに対して、曜さんはすごく上手い。……この上手い人を相手に、私に出来ることは)

理亞(私が持ってる、武器は)

理亞「……やるしか、ない」

理亞「――ふっ!」キュッ、…ギュルッ!!

曜「っ!」

理亞(私の武器なんて、この脚しかない! ドリブルなんか出来ないんだ、だったら2歩で抜いてやる――!)

曜「こ、この距離でボール持ったまま……!?」

理亞(少しでいいっ。この2歩の間に、ほんの少しでも曜さんよりゴールへ近づければそれでいい!)

理亞(まず1歩! 切り返して2歩目で跳んで――!)

曜「くっ!?」

果南「まぁボール抱えた相手は簡単には捕まえられないよね……でも、あれ着地したらトラベリングなんだけど――」

60: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 22:58:15.15 ID:A+QPU2Oi
理亞「……っ!」ヒュッ

曜「えっ、そこでシュート打つの!?」

果南「いやいや。無理でしょ、あの距離であんな体勢なんて……」

理亞(知ってる! っていうか、どんな体勢で打ったって私のシュートは入らない、体育でも入ったことないし!)

理亞(私の武器は脚しかない! 来る日も来る日も走って踊って、鍛えてきたこの脚しか――いや)

理亞(この脚なら! この人にも勝てるはず――!)


――ガッ


果南「リングに当たった! 曜、リバウンド!」

曜「分かってるって! っていうかホントにどっちの味方!?」

果南「公平な審判! どっちも応援するよ!」

曜「それ公平って言うのか――なっ!」バッ

理亞(曜さん、跳んだ……でも、位置は私の方がゴールに近い。私の方が背は低いけど、これなら――)グッ…

61: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 23:00:02.12 ID:A+QPU2Oi
理亞「ふっ!」タンッ!

曜「な――、嘘でしょ!?」

果南「……うわ。たっか」

理亞(相手より高く跳べば、背が低くたって済む話!)パシッ

理亞(このまま――!)

理亞「や、ぁっ!」


 ガゴンッ!
   ギシッ、ギシッギシッ…


曜「……ダ」

曜「ダンクシュートぉ……!?」

果南「ナマのダンクなんて初めて見た……」

62: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 23:00:44.04 ID:A+QPU2Oi
理亞「ふー……さあ。2セット目、やろうか」

果南「いや、そんな何事もなかったみたいに……。今のってもしかして、凄いことしたんじゃない?」

果南「そう言えば理亞ちゃん、ムーンサルトでみんなの身長飛び越えたって聞いたっけ。冗談だと思ってたけど」

曜「本当のことだよ。……うん、改めて見ても凄いや。ダンクなんて、間違いなく世界レベルのアスリートだよ、理亞ちゃんは」

理亞「……アスリートも世界も興味ない」

曜「あはは、凄いこと言うね。理亞ちゃんに嫉妬する人、日本中どころか世界中にいるよ、きっと」

理亞「私はあなたたちが羨ましい。どんなに高く跳んだって、あのステージには届かない」

理亞「高く、高く。こんなにも高く跳べるようになったのに。……何の意味も、ない」

果南「……」

曜「……うん、そうだね。いろんなものが手元にあるのに、一番大切なものに触れられないのは悔しいよね。――でも、だから」キュッ

曜「続けようか、理亞ちゃん。せっかくそれだけ夢中になれることがあるのに、独りだなんて苦しいよ」

曜「一緒にやろう、全力で。こんなに楽しいこと、独りだなんて勿体ないよ――!」ヒュパッ…





63: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 23:01:28.63 ID:A+QPU2Oi
理亞「た、ぁぁっ!」ガゴンッ! ギシギシ…

果南「ゴール! 攻守交替。17セット目、曜のオフェンス!」ピピー

果南「んー……一進一退。凄いね、これは。でも――」

理亞「はぁ……! はぁ……! はぁ……!」

果南「……結構な距離を走ってる中であんなジャンプ連続でやってればああなるか。理亞ちゃん、ダンクしかしないし」

果南「それに対して――」チラッ

曜「……」ダンッダンッ…キュッ、ギュル

曜「ほっ――!」タットッ――パス…

果南「ゴール!」ピピー

果南「初めより動きが良くなってる。さすが曜、相変わらず飲み込みが早いよ。……そろそろ、終わりも近いかなーん」

64: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 23:02:45.40 ID:A+QPU2Oi
理亞「ふー……ふー……っ」ダンッ、ダンッ…

曜「えへへ――楽しいね、理亞ちゃん」

理亞「趣味悪い……」

曜「そうかな。そんなことないよ。だって私たち全力だもん。全力で、全力の理亞ちゃんに勝つよ」

理亞「誰が、負けてやるもんか……!」

曜「だから楽しいの。さあ――勝負だよ、理亞ちゃん!」

理亞「ふーっ、――ふっ!」タッ

曜「……っ」キュッ

理亞「……!?」

理亞(回り込まれた……速い――いや、読まれてる!? 私が切り返す方向、タイミング、スピードも……!)

65: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 23:03:54.90 ID:A+QPU2Oi
理亞(どうするっ、ボールはもう持った、許されるのはあと1歩だけ……! このまま突っ込めば間違いなくファウルになる――!)

理亞(もう、止まるしか……っ)

曜「――楽しいよ」

曜「私とこんなに真剣に勝負してくれたのって、理亞ちゃんが初めてかもしれない!」

理亞「っ!」

理亞(……止まれない。跳ばなきゃいけない。鍛えたこの脚で! この人に勝つために!)

理亞(高く、高く、もっと高く。誰も届かない場所へ……! 私だけが、届く場所まで――!)

理亞「……っ」グッ…

曜「――だから、ごめんね。手は抜けないんだ、真剣だもん」ヒュッ…

66: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 23:04:27.45 ID:A+QPU2Oi
理亞「!?」

理亞(……あぁっ、本当に上手いなぁ、この人は! これも読まれた、タイミングまで全部!)

理亞(ゴール下。ジャンプの軌道。私の動きを読んで、ほんの少しだけ早く先に跳んで――)

理亞(私を、墜とす気だ……!)

理亞「くっ!」タンッ

曜「や、ぁ――!」


 ガゴッ――!
   トンッ、トンット、ト、ト…
  ギシッ…ギシッ…


曜「ふー……まあ、跳ぶよね。理亞ちゃんなら跳ぶ。疲れてたって、あれくらいは」

曜「タイミング、早めて正解だったよ」ニコッ

理亞「……はぁ」ブラーン、ブラーン…

67: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 23:05:04.29 ID:A+QPU2Oi
理亞「言い訳できない。私の負け」…スタッ

果南「ゲーム終了、曜の勝ち――!」ピピー

理亞「ああ――また負けた……。いや」

理亞(言われてみれば、私も誰かと真剣に勝負したことって、なかったかもしれない。……友達いないし)

理亞(悔しいな。全力で挑んでも勝てないなんて、悔しい。――でも)

曜「えへへ。楽しかったね、理亞ちゃん!」

理亞「……羨ましい人」

曜「あれ。楽しくなかった?」

理亞(お互いに全力を出し切れたことは。それだけはちょっとだけ、気持ちが良いって、思う)

理亞(最後のジャンプはきっと、誰よりも何よりも。過去の私よりも高く跳べた――そこに意味は、ないかもしれないけど)

理亞「まあ……それなりに」

曜「なら良かった」ニコッ

68: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 23:05:52.78 ID:A+QPU2Oi
果南「2人とも、お疲れ様。はい、差し入れ。のど渇いたでしょ、ドリンク用意してあるよ」

曜「わっ、ありがとう果南ちゃん! おごりだよね?」

果南「もちろん。私もいちおうは社会人だしねー。外国で潜ってるだけだけど」

曜「やった!」

果南「はい、理亞ちゃんも」

理亞「そんな。悪いよ……」

果南「いいから。変なことに付き合わせてるのはこっちだし」

理亞「変なこと――あ。そう言えば、私が負けたら、さらわれた2人はどうなるんだっけ……」

理亞「もしかして、もうゲームオーバーとか」

曜「ん? いや、普通に次の場所を教えるよ? 勝たなきゃいけないなんて最初から言ってないし」ゴクゴク

理亞「そ、それでいいの……?」

曜「いいの。私が理亞ちゃんに次へ進んでもらう条件はひとつだけ。私も理亞ちゃんも、楽しめたかどうか!」

69: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 23:06:37.01 ID:A+QPU2Oi
曜「だから理亞ちゃん」

理亞「……」

曜「次はラブライブ決勝であります! 理亞ちゃんもメンバーの子たちと一緒に、全力で楽しもう!」

理亞「全力で、楽しむ……一緒に?」

曜「うん。だって、せっかくスクールアイドルなんだもん! 自分だけなんて、自分たちだけなんて、勿体ないよ!」

理亞「本当に、羨ましい人……」

理亞「……楽しめるかな。私にも」

曜「もちろん。楽しい思い出、いっぱいあるでしょ?」

理亞「……うん」

理亞「いっぱい、ある。いっぱい……」

理亞「……曜さん。次の目的地を教えて」

70: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 23:07:35.91 ID:A+QPU2Oi
曜「もういいの? もう少し休んだ方が良くない?」

理亞「大丈夫。確かに疲れてるけど……行かなきゃ。私の仲間が、待ってる」

曜「……そっか」ニコッ

曜「じゃあ教えるね。次の場所は聖ヨハネ教会。そこで待ってる子は、優しい子だけど容赦ないよ」

理亞「……学校の近くか。順番、何とかならなかったの……?」

曜「それについてはわざとだよ。じゃあ、理亞ちゃん。全速全身――」

理亞「ん……んむ」

曜「ほら。やってやって」

理亞「ぅ……よ、ヨーソロー」

曜「行ってらっしゃい!」

理亞「……これ、恥ずかしい///」タッタッタッタ

果南「んーっ、行ったね。うん、昨日よりいい顔してた、かな」

曜「うん……さぁて。じゃあ、次は果南ちゃんもバスケやろうよ、私と一緒に。見ててばっかりじゃ――つまらないでしょ!」

71: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 23:09:37.54 ID:A+QPU2Oi
疲れました…実はまだ半分くらいです
理亞ちゃんの誕生日の内に投下し尽くすのは無理っぽいのでまた来ます

理亞ちゃん誕生日おめでとう!

72: 輝きたい名無しさん 2018/12/12(水) 23:10:36.51 ID:xVxdRtSR
ココココ・・・良いですねぇ

73: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 00:09:52.54 ID:je/MMwHD
うーん、これは青春だぁ(恍惚)

77: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 16:25:51.24 ID:w8UPG2qm
クイズわろた

78: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:36:12.01 ID:5UCDpwMN
タッタッタッタッタ…
石川公園 → 聖ヨハネ教会(約7.9km)


理亞「はー……はー……はー……」

理亞「よ、ようやく着いた……さすがにバスケに加えてこれだけ走るのはキツい。もう少し休めば良かった……」

理亞「……教会の中からオルガンの音が聞こえる……ってことは中にいるのは」ギィィ

「お疲れ様、理亞ちゃん」~♪

理亞「やっぱりあなた――梨子さん」

梨子「こんにちは。お久しぶり」

79: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:37:03.37 ID:5UCDpwMN
理亞「うん……それ、勝手に弾いていいの?」

梨子「鞠莉ちゃんが教会の人に話を通してくれたみたいで。好きに弾いていいって」

理亞「あの人、本当に根回しが早い……まあ、いいけど」

理亞「で。あなたとは何の勝負をするの? 料理対決とか?」

梨子「それなんだけど。私、あんまり勝負とかって得意じゃないから……。そういうの、無しでもいい……?」

理亞「えぇ……」

梨子「理亞ちゃんも走って疲れてるでしょ。そこで休んでていいから。ね?」

理亞「……いいのかな」

梨子「たぶん……。ほら、勝負の内容はどうでも良くって、お互いに納得できればいいって言われてるから」

理亞「まあ、それなら助かるけど」

梨子「私はオルガン弾いてるから、良ければ聞いて行って」

梨子「――♪」

理亞「……」

80: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:37:48.09 ID:5UCDpwMN
理亞(厳かなオルガンの音色と一緒に、暴れる心臓が鎮まっていく……溢れる汗が引いていく)

理亞(――上手だ。私も作曲を始めて、少しくらい楽器を触るようになったから分かる)

理亞(この人、とんでもない――これが、Aqoursの音楽か……)





梨子「――♪ ……ふぅ。お粗末さま」

理亞「……すごい」

梨子「ふふっ。そうかな、ありがとう」

理亞「姉様が言ってた。Aqoursが短期間のうちに注目されるようになった要因はいくつかあるけど、一番は桜内梨子だって」

理亞「その時はピンと来てなかったけど……今なら分かる」

梨子「大袈裟だよ、そんなの」

理亞「……あんまり謙遜するのは良くないと思う」

81: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:38:34.85 ID:5UCDpwMN
梨子「わっ、理亞ちゃんに言われちゃった。理亞ちゃんだって相当だと思うけど」

理亞「私は練習してるだけ。……練習したって、才能がなければ結果も出せない」

梨子「……才能があれば、結果が出せる?」

理亞「そうでしょ。あなたも、それに姉様もそう。……私とは違う」

梨子「じゃあ、そんな理亞ちゃんにガッカリすることを教えてあげます」

理亞「え?」

梨子「聖良さんや理亞ちゃんが才能を認めてくれる私、桜内梨子ですが。――この前、ピアノのコンクール落ちちゃいました」ニコッ

梨子「ちょっと今の自分よりレベルの高いコンクールかなって思ってはいたけど。予想以上、甘く見てた」

理亞「え……え、っと」

理亞「何か、失敗したの」

梨子「してません。我ながら渾身の出来でした。でも、ダメだったんだ」

82: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:39:21.81 ID:5UCDpwMN
理亞「……あなたでもそんなこと、あるんだ」

梨子「もちろん。私よりも上手い人なんて、いっぱいいるから。それこそゴマンと」

理亞「辛く、ないの。そういうのって。だって、あなただってピアノ、ずっと練習してきたんでしょ?」

梨子「辛くはない、かな。悔しいとは思うけど。でも、やれるだけのことはやったから。いい経験だった」

理亞「……どうしてそう思えるの。努力が報われなかったのに。あなたは努力に……裏切られたのに」

梨子「努力に裏切られたなんて、思ってないよ」

理亞「どうして……?」

梨子「……昔の話、なんだけどね」

梨子「どうしても入賞したいコンクールがあって、両親からも周囲からも期待されて。そのプレッシャーに負けたことがあるの」

83: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:40:18.65 ID:5UCDpwMN
梨子「入賞したい、失敗できない。失敗したらどうしよう。最高の演奏をしなきゃ。緊張する――」

梨子「頭の中がぐるぐる回って、舞台はノイズに満ちていて。……指が、動いてくれなかった」

梨子「そこからは酷いスランプで、弾いても弾いても上手くいかなくって。……辛かったな。あの時は」

理亞「それって……」

理亞(私と、似てる……?)

理亞「……あの。それがどうして。裏切られたと思わないってことになるの……?」

理亞(この人は、答えを知ってる。私が欲しい答えを知っていて、乗り越えて、その先にいる)

理亞(この人なら、きっと――!)

梨子「ふふっ。それはね」

理亞「ごくっ……」

梨子「教えてあげない」

理亞「……」

理亞「えっ」

84: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:41:02.26 ID:5UCDpwMN
梨子「ごめんね。あんまり突っ込んだ話はしないで、って言われてるの」

理亞「えぇ……また鞠莉さん?」

梨子「違うよ。あなたのことを一番、想っている人から」

理亞「私を?」

梨子「……そろそろ次の場所を教えます。次は、函館昭和温泉」

理亞「温泉……? って、そこ石川公園の近く! ほんと順番なんとかして!」

梨子「このルートもある人の意向だから……」

理亞「ある人って?」

梨子「……その人が言うの。私たち一人一人が理亞ちゃんの財産だから、って」

梨子「私たちと会って、話して、理亞ちゃんが駆け抜けてきた道をもう一度見つめ直してほしいんだ、って」

梨子「この程度の距離なんか、理亞ちゃんが今日まで駆け抜けてきた道と比べれば何てことないんだ、って」

梨子「――鹿角理亞に、それが出来ないはずがない、って」

理亞「! ……それってもしかして。……姉様、が?」

梨子「行って、理亞ちゃん。あなたを信じている人のためにも」

85: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:41:45.48 ID:5UCDpwMN
理亞「そう……相変わらず、スパルタな人だな……」ウルッ

理亞「っ」ゴシゴシ

理亞「――行ってくる。まだどうすればいいか分からないけど、でも、行かなきゃ」

梨子「うん。車と足元には気を付けてね」

理亞「梨子さんも、ありがとう。梨子さんの演奏、また聴きたい」

梨子「ありがとう。私も理亞ちゃんの音、聴いてみたいな」

理亞「うん、出来れば、ステージで。……行ってきます」タッタッタ

梨子「……」

梨子「……――理亞ちゃん!」

理亞「?」

梨子「努力は裏切らない――それが本当なら、あの時の私は、理亞ちゃんは、どうして上手くいかなかったの!?」

梨子「私たちは、いったい何に裏切られたの!?」

86: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:42:32.89 ID:5UCDpwMN
梨子「よく考えて! 誰が、何を裏切ったのかを! ――それが理亞ちゃんが求めてる答えだから!」

梨子「よく考えて! 聖良さんは、私たちは、ただ無条件にあなたを信じてるわけじゃないんだから!」

理亞「……裏切、った? 誰が……何、を?」

梨子「行って、理亞ちゃん! 大好きなことを、必死にやってきたことを、辛いままにしたくないでしょ!?」

梨子「――次の子が、あなたを信じて待っているから!」

理亞「……あぁ、もうっ」タッタッタ…

理亞(分からない……誰が、何を裏切ったのか)

理亞(私は裏切られたの? 努力とは違う、もっと別の何かに? それは誰? 姉様?)

理亞(違う。姉様なわけない。……じゃあ、いったい。裏切ったのは、誰なんだろう……?)

梨子「――はぁ……しゃべり過ぎた、かなぁ。あとで聖良さんに何か言われちゃうかな……」

梨子「我ながら偉そうなこと言っちゃった。本当に――私もずいぶん、変われたなぁ……」

87: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:43:05.48 ID:5UCDpwMN
タッタッタッタッタ…
聖ヨハネ教会 → 昭和温泉(約6.9km)


理亞「ぜー……ぜー……。つ、着いた……昭和温泉」

理亞「今日、何キロ走ったんだっけ……多分、そこまでの距離じゃないけどバスケが効いてる……」

理亞「温泉か……お風呂入りたいな……」

「じゃあ一緒に入るずら」

理亞「……そう。ここはあなたなの。花丸」

花丸「久しぶり、理亞ちゃん。さあ、お風呂入ろうか」

理亞「お風呂って、あなたね……勝負があるんじゃないの。私も、早く次の場所を教えてもらわないと」

花丸「勝負? 別にいいずら、そんなの。次の場所ならお風呂上りにでも話すから」

理亞「どんどん適当になってく……」

88: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:43:50.35 ID:5UCDpwMN
花丸「ここは休憩ポイントだと思ってもらえればいいよ。さ、函館の温泉楽しみずら~」テクテク

理亞「あ、ちょ。私は入るなんて言ってな――、」

理亞「……はぁ。しょうがない。疲れてるのは確かだし、諦めて入ろうか……」





カポーン

花丸「極楽浄土ずらぁ……」

理亞「あなたの家の宗派ってそれだっけ? と言うか……」

理亞(知ってはいたけど、でっかい……なにこれずるい。浮いてる。背は私より低いくせに)ジー

花丸「……おっぱい気になるずら?」

理亞「べっ/// 別にそういうわけじゃあ……///」

花丸「そう? でもルビィちゃんや善子ちゃんにはよく言われるずら。背は低いのに何でそんな大きくなるの―、って」

花丸「そんなのこっちが知りたいずら……マルも、鞠莉ちゃんくらい背が高かったらなぁ」

理亞「贅沢なやつ」

89: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:44:30.90 ID:5UCDpwMN
花丸「……でも、理亞ちゃんもよく見ると」ジー

理亞「じ、ジロジロ見ないでっ///」

花丸「筋肉すっごいずら~! わぁ……曜ちゃんにも負けてない」ペタペタ

理亞「ちょ、やめてっ/// 触っていいなんて言ってないっ///」

花丸「あぁごめんなさい。つい――あれ?」

花丸「……傷痕」

理亞「ん?」

花丸「ひとつじゃない……よく見たら薄く、古い傷跡がいっぱいあるずら。これは、擦り傷?」

理亞「あぁ……。昔はよく転んでたから」

花丸「そうなの?」

90: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:45:11.17 ID:5UCDpwMN
理亞「出来ないくせにA-RISEの真似して踊ったりして。思えば、結構無茶してたかも」

花丸「無茶してるのは今も変わらないけど」

理亞「ぐっ」

花丸「ずっと前からしてたんだね。練習」

理亞「姉様とスクールアイドル、したかったから」

花丸「それって小学生くらいの話だよね? ……理亞ちゃんはすごいずら。小さい頃から、ずっと鍛えて、練習して」

理亞「……そういうの、やめて」

理亞「あなたにそのつもりがないのは分かるけど、でも。優勝した人にそう言われるのは、なんだか……」

花丸「嫉妬する?」

理亞「っ、言わなくてもいいでしょ……! そんなこと、わざわざ」

91: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:45:42.07 ID:5UCDpwMN
花丸「言うずら。言いたいことも我慢して、押し込んで。それは理亞ちゃんのいい所だと思うけど、面倒くさい部分でもあるずら」

花丸「そんなだから長い間、ひとりも友達がいなかったんじゃない?」

理亞「う、うるさいっ! 友達のことは放っておいて!」

花丸「ほら。オラはこうやって理亞ちゃんのこと好き勝手に言うから。だから理亞ちゃんも、好きに言ってほしいずら」

花丸「苦しいこと、抑え込ませるためにマルはここへ来たわけじゃない」

理亞「……っ」チャプ…

理亞「……あなたに私の何が分かるの。私のこと、大して知りもしないくせに」

花丸「もちろん何にも分からないずら。そもそもマルは誰かのことを理解したことなんか、一度もないよ」

花丸「マルはマルの中の浅~い知識だけで理亞ちゃんのことを決めつけてる。人間ってそういうものずら」

理亞「だったら勝手なこと言わないで。私は……すごくなんか、ない」

花丸「すごいよ。理亞ちゃんは」

理亞「それをやめてって言ってるの! 優勝したあなたたちと比べて、ミスばかりの私の何がすごいの!?」

理亞「馬鹿にするのもいい加減にして!!」

92: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:46:17.05 ID:5UCDpwMN
花丸「……オラは理亞ちゃんを理解してる訳じゃない。理亞ちゃんのこと、ほんの少ししか知らないけど、でも」

花丸「少しは、知ってるずら。理亞ちゃんがすごいってことを、知っているずら」

花丸「本には書いてないこと。本の世界から飛び出したから知れたこと。――否定させたりしないよ、理亞ちゃんにだって」

理亞「チッ……何なの、いったい」

花丸「聞きたい? オラが理亞ちゃんをどう思ってるか」

理亞「……聞きたくない」

花丸「まず、理亞ちゃんは人付き合いが壊滅的に苦手ずら。人見知り、口下手、ぶっきら棒。怒りっぽくてすぐムキになって攻撃的」

花丸「ちょっと、どう見てもアイドルには向いてないタイプずら」

理亞「あなた喧嘩売ってる!?」

花丸「……マルは諦めてたから」

理亞「……?」

花丸「ずっと、諦めてた。憧れる気持ちも何もかも押し込んで、マルは本の世界にいた……スクールアイドルを始めるまでは」

93: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:46:58.51 ID:5UCDpwMN
花丸「スクールアイドル、向いてないのはオラも同じ。ちんちくりんだし、運動できないし体力ないし、目立つことも苦手で」

花丸「歌は好きだけど、取り柄と言ったらそれくらい。こんなマルがμ'sみたいになれる訳ないって、思ってたずら」

花丸「理亞ちゃんはすごいずら。憧れに、なりたい自分に向かって一生懸命で。絶対に諦めない」

理亞「……憧れに、届いたでしょ。あなたの場合は。すごいのはあなたの方」

理亞「私は何にも届いてない」

花丸「仮に何にも届いてなかったとしたら。じゃあ、本当にそれだけずら?」

理亞「え?」

94: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:47:35.54 ID:5UCDpwMN
花丸「前から、知ってたこと。理亞ちゃんはダンスが得意でバク転どころかムーンサルトだって出来る」

花丸「今日、新しく知ったこと。理亞ちゃんは昔はダンスが出来なくて、よく転んでた」

花丸「オラには分からないこと。理亞ちゃんが最初にA-RISEに出会ってから、今、どれだけその憧れに近づいたのか」

花丸「理亞ちゃん。あなたは今、どこにいるの」

理亞「どこ、に……?」

花丸「理亞ちゃんは後ろ向きなのに前しか見ないのが問題ずら。たまには周りを見渡してもいいと思うよ」

花丸「そこにはきっと、理亞ちゃんだけの世界がある……」

理亞「……どういう意味」

花丸「そういう意味ずら」

花丸「さあ。そろそろお風呂、上がるずら。これ以上はのぼせそう」ザパッ

95: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:48:06.58 ID:5UCDpwMN




花丸「ごくっ、ごくっ……ぷはぁ! お風呂上がりのオレンジジュースは最高ずら~」

理亞「……私はフルーツ牛乳の方が好き」クピクピ

花丸「オラは牛乳が苦手ずら」

理亞「それでその大きさ……くっ」

花丸「? えっと、じゃあ、そろそろ次の場所を教えるね」

花丸「次の場所は――函館山展望台。そこが最後」

理亞「……函館山」

理亞「そう。あの場所が、最後……最後に、待ってるのは」

花丸「分かるよね。そこに誰が待ってるかは」

96: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:48:49.38 ID:5UCDpwMN
理亞「……」

花丸「どうかしたずら?」

理亞「どう、って……」

花丸「ずっと連絡とってなかったんだよね。ルビィちゃんに」

理亞「……だって」

花丸「まあ、気持ちは分かるずら。大好きなルビィちゃんに、置いてかれそうで焦る気持ち」

理亞「だ、大好きとか別にそういうわけじゃない!」

花丸「誤魔化さなくてもいいずら。オラと理亞ちゃんはよく似てる」

花丸「……違うのは、諦めてきたか、足掻いてきたか」

理亞「……私は、あなたとは違う」

花丸「知ってるずら」

97: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:50:01.54 ID:5UCDpwMN
花丸「さ、理亞ちゃん。最後まで足掻こうよ。オラの知ってる理亞ちゃんらしく」

花丸「次は東京で、いろいろ案内してほしいずら。マル、まだ東京のことはよく分からないから」

理亞「……私だって東京のことはよく知らない。でも、……スクールアイドルの名所くらいなら」

花丸「楽しみにしてるずら。――行ってらっしゃい」

理亞「……うん。きっと」タッタッタッタ…

花丸「――はぁ~。理亞ちゃんは気難しいから大変ずら」

花丸「……本も好きだけど、外の世界に出てきて良かった。――さ、ラッキーピエロでも行こうかな」

98: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:50:49.64 ID:5UCDpwMN
タッタッタッタッタ…

理亞「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ……」タッタッタッ

理亞(お風呂に入って休んだおかげか、だいぶ楽になった……函館山、これなら問題なさそう)

理亞(問題があるとしたら、それは――)

理亞「はっ、はっ、はっ……」

理亞(函館山の展望台。あの場所で、ルビィが待ってる。一緒に歌を贈ったあの場所で)

理亞(姉様がスクールアイドルを終えたあの場所で。私がもう一度はじめたあの場所で)

理亞(あの日から私だけが、何も変われていないのに……)

理亞「はっ、はっ、はっ……」

理亞(ルビィにどんな顔をして会えばいいんだろう。また歌おうって約束したのに、今の私じゃあそれだって出来ない)

理亞(あの子に会うのが、あの場所に行くのが――怖い)

99: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:51:17.56 ID:5UCDpwMN
理亞「はっ、はっ、はっ……――っ?」ハラリ…

理亞「何か落ちた……あぁ。善子から貰った羽根が髪から外れたんだ」ヒョイ

理亞(……善子)ギュッ


 『未来を決めるのは――努力したあなた自身なんだから』
 『それは偶然でもなければ奇跡でも運命でもない。必然の未来』


理亞(私の未来が必然なら。あの日のミスは、何を間違えた結果なんだろう……)


 『あなたはもう、空を翔べるのよ』


理亞(翔び方なんて知らない。走るだけで、ただそれだけで私には精一杯。――でも)

理亞(もし翔べるのなら翔んでみたい。そうすれば私にも、あなたたちと同じ景色が見える?)

理亞「……今は。走ろう。ロープウェイまであと少し」タッ

100: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:52:01.41 ID:5UCDpwMN
タッタッタッタッタ…

 『何があったって諦められない。夢中になっちゃったら、本気になっちゃったら、勝ちたいって思う』


理亞(……知ってる。そんなこと、あなたよりもずっと知ってる)

理亞(だから辛いの。諦められないから、勝ちたくて仕方がないから、どうすれば分からないから、だから辛い)


 『だから私も信じるの。0から1へ――夢中で駆け抜けてきたその道を』


理亞(0を1にしたなんて、ただそれだけの事のいったい何を信じたの)

理亞(……私にも、信じられるものはある?)

101: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:52:40.82 ID:5UCDpwMN
タッタッタッタッタ…

 『楽しいよ。私とこんなに真剣に勝負してくれたのって、理亞ちゃんが初めてかもしれない!』
 『えへへ。楽しかったね、理亞ちゃん!』


理亞(あの勝負は楽しかったな……負けて楽しいと思えることがあるなんて、知らなかった。今も悔しいけど)


 『メンバーの子たちと一緒に、全力で楽しもう!!』


理亞(楽しいだけのライブが出来るならどんなに幸せか……ラブライブってそうじゃないでしょ)

理亞(でも。楽しいライブは、たくさんあった。……楽しいって、何だろう?)

102: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:53:08.99 ID:5UCDpwMN
タッタッタッタッタ…

 『努力に裏切られたなんて、思ってないよ』
 『私たちは、いったい何に裏切られたの!?』


理亞(私は裏切られたのかな……努力じゃない何かに)

理亞(分からない。1年前のあの地区予選にいたのは、私と姉様だけなのに。……裏切ったのは、いったい誰なの)


 『ただ無条件にあなたを信じてるわけじゃないんだから!』


理亞(不思議な感じ。何も出来ない私を信じるなんて)

理亞(私の何を信じてくれているんだろう。……それを教えては、くれないよね?)

103: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:53:36.70 ID:5UCDpwMN
タッタッタッタッタ…

 『仮に何にも届いてなかったとしたら。じゃあ、本当にそれだけずら?』
 『理亞ちゃん。あなたは今、どこにいるの』


理亞(抽象的でよく分からない。私はここにいる。……ただ、ここにいる。それだけ……)


 『違うのは、諦めてきたか、足掻いてきたか』


理亞(足掻きたくて足掻いてきたわけじゃない。足掻くことしか出来ないから、そうしてきただけ)

理亞(足掻いて足掻いて。……それで何かが少しは、変わってくれたのかな……?)

104: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:54:13.14 ID:5UCDpwMN
タッタッタッタッタ…
昭和温泉 → 函館山ロープウェイ山麓駅(約6.9km)


理亞「はぁ……はぁ……着いた。函館山……ここが最後」

理亞「あとはロープウェイに乗れば山頂に――」

「学校-五稜郭タワー間、約5.2km。五稜郭タワー-函館港間、約4.6km。函館港-石川公園間、約3.7km……」

理亞「!? うそ……その、声は」

「石川公園-聖ヨハネ教会間、約7.9km。聖ヨハネ教会-昭和温泉間、約6.9km。昭和温泉-ロープウェイ山麓駅間、約6.9km……」

「総走破距離、実に約35.2km。――それが今日、あなたが駆け抜けてきた道よ」

理亞「ねえ、さま……!?」

聖良「……積み上げれば結構な距離ね。あなたは今日、確かに、この距離を走り抜けた」

聖良「A-RISEに出会うまでは家で遊んでばかりで、たった1km走るだけでも精一杯だったあなたが。その脚で」

105: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:54:40.52 ID:5UCDpwMN
理亞「な、何で姉様が……姉様は来ないんじゃ」

聖良「そのつもりだったんだけど。千歌さんに諭されてしまって」

聖良「スクールアイドル鹿角理亞を語るのに、私の存在は欠かせないと。ひとりのスクールアイドルとして、あなたと向き合え、と」

聖良「だから反省して来てみれば。ふふ――情けない顔ね、相棒。今にも泣きだしてしまいそうな」

理亞「っ……そんなこと、ない」

聖良「そう? なら、最後までその意地を張りなさい。……さあ、山頂行きの便が出るわ。行きましょう」

106: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:55:16.83 ID:5UCDpwMN
ゴゥンゴゥンゴゥン…

聖良「このロープウェイも、ちょうど1年ぶりね……」

理亞「……ねえ。Aqoursの人たちを連れてきたの、姉様だって聞いたけど」

聖良「ええ。どうだった? 今日、Aqoursのみなさんと会って、話をして」

理亞「……自分が情けない」

聖良「と言うと?」

理亞「みんなは今回も地区予選を突破して、前よりもっと大きくなってた。……私だけ、何も変われてないから」

聖良「そんなことはないと思うけど。あなただって、彼女たちに負けてない」

理亞「慰めはやめて……。優勝経験者と、地区予選で何度もミスしてるようなのと比べて、何が負けてないって言うの」

聖良「実力よ。私はそれ以外に評価しない」

理亞「っ、甘やかすのはやめてよ! 姉様に、姉様にそんな風に慰められるのは、それだけは……っ!」

聖良「甘やかす? もしかして私の言葉を、姉妹の情が言わせたものだと思ってる?」

聖良「もしそうだとしたら。……見くびられたものね」

理亞「え――?」

107: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:55:57.35 ID:5UCDpwMN
聖良「あなたは私のパートナーでしょう。私が選んだ、パートナー。……その意味が分からない?」

聖良「遊びでやってたわけじゃない。仲良し姉妹の思い出作りなわけでもない」

聖良「情で組むくらいなら私はソロを選ぶ。使えないと判断したなら、たとえ妹であっても切り捨てていた……でも」

聖良「私は最後までSaint Snowだった。あなたとスクールアイドルだった。そこに悔いはないし、今も誇りに思ってる」

理亞「……どうして姉様は、そこまで言ってくれるの。あの日ミスした私なんかを、そこまで……」

聖良「あなたの過去を、誰よりも知っているから」

理亞「過去……?」

聖良「努力は裏切らない――誰も過去を変えることは出来ないのだから」

理亞「それって」

聖良「未来は、過去を積み重ねた今の向こうにしかない」

聖良「それだけのこと。たったそれだけのことなの……理亞。あなたが悩んでいることは」

108: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:56:42.03 ID:5UCDpwMN
聖良「毎日毎日飽きもせず、ただ我武者羅に走り抜けた過去があるから、Aqoursはここへ集まってくれた」

聖良「過去の鹿角理亞があるから、あなたはここまでの距離を走破した。――過去と今が結びついて、未来を拓いた……」

聖良「それだけの、こと」

理亞「……善子が言ってた。私の未来は必然だって」

聖良「ふふっ。さすがは堕天使。いいことを言うのね」

理亞「だとしたら、1年前のあの日のミスは」

聖良「今にして思えば、そうね。必然だったんでしょう。未然に防ぐことが出来なったのは、私の責任でもある」

理亞「それなら。次の、地区予選は」

聖良「……どうなると思う?」

109: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:57:10.82 ID:5UCDpwMN
理亞「……っ」

聖良「理亞」ギュッ ナデナデ

理亞「ねえ、さま……」

聖良「誰も過去を変えることは出来ない。未来を決めるのはいつだって昨日の自分。でも、明日になれば今日だってまた過去になる」

聖良「明日のために今日を描くのは、あなたよ。――ねえ、理亞。明日をどんな日にしたい……?」

理亞「どんな、日に?」

聖良「ふふ――もうすぐ山頂ね」




110: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:57:50.02 ID:5UCDpwMN
~函館山展望台~

鞠莉「ウェルカム♪ よくここまで辿り着いたわね!」バサッ

理亞「うわ……何なのその、マントと仮面……」

鞠莉「怪盗マリーちゃんよ♪ やっぱり怪盗っていえばマントと仮面って相場が決まってマース」

理亞「そ、そうかな……」

聖良「さて。――じゃあ、理亞。私はここまでね」

理亞「え。姉様、来ないの……?」

聖良「Saint Snowはもう終わったでしょう? あなたにはあなたのグループがある」

理亞「……うん」

111: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:58:28.49 ID:5UCDpwMN
聖良「――理亞」

聖良「勝ちたいか、なんてあなたには聞かない。だからひとつだけ……誰のためのラブライブなの?」

理亞「……!」

聖良「Aqoursのみなさんは、その答えを持ってる。あなたはどう?」

理亞「私は。私の、ラブライブは」

聖良「ふふ……行きなさい。“今”は待ってはくれないのだから――悔いのないように」

理亞「……うん」タッタッタ…

聖良「ふぅ。……鞠莉さん。今日は色々とありがとうございます。あなたの協力、本当に助かりました」

112: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 19:58:48.40 ID:5UCDpwMN
鞠莉「別にあなたのためにしたことじゃないけどね。私だけじゃない、他のみんなも、そう」

聖良「……はい。だから、ありがとうございます」

鞠莉「ふふ……お言葉と気持ちは受け取っておくわ。――必ず、あの子にも届けてみせる」

聖良「くすっ。怪盗さんが届け物ですか?」

鞠莉「悩める者にはプレゼント。義賊の基本でしょ?」

鞠莉「それじゃあ、チャオ☆」バサッ

聖良「……本当に、いい人たちに巡り合えました。私も、あなたも。そう思うでしょう、理亞……?」

113: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 20:11:44.55 ID:5UCDpwMN
理亞「……」コツ、コツ、コツ、コツ…

理亞「……」

理亞(ああ――あの、赤い髪)

理亞(1年前の12月。私はこの場所で、あの赤い髪の女の子と背中を合わせて歌を歌った)

理亞(あんなに近くにあったのに。今はとても、遠い背中――)

「待ってたよ。理亞ちゃん。ここが最後――だけど、さあ」クルッ

理亞「……」

ルビィ「次は、どこへ行こうか」

理亞(どこへ、なんて。私はただ、あなたたちと同じ場所へ、行ってみたいの……)

理亞(どうすればその場所へ登れるのか。その答えを知りたいの)

114: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 20:12:09.94 ID:5UCDpwMN
理亞「……私の仲間は、あの2人はどこ。あなたとは、どんな勝負をすればいいの」

ルビィ「ルビィとの勝負はないよ。ここに来た時点で終わりなの」

ルビィ「ルビィはただここで待ってる。理亞ちゃんがここへ来てくれるのを、信じて待ってる」

理亞(だから。行けるものなら行きたいの……あなたのいる場所へ、今すぐにでも)

理亞(でも、それが出来ないから苦しいのに)

理亞「……早く2人を返して。今日も練習があるんだから」

ルビィ「ルビィは構わないよ。でも――、」

理亞「でも?」

鞠莉「そうはいきまセーン! 人質を返すことは出来ないのデース!」

理亞「! ……どういう意味?」

鞠莉「人質はとっくに解放してるの。でも、あなたの元へ帰りたくないって言うんだから、しょうがないじゃない?」

鞠莉「そうでしょ? 2人とも」

理亞「え……?」

黒髪「……」 茶髪「……」ザッ

115: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 20:12:58.29 ID:5UCDpwMN
理亞「え、2人とも、何やってるの……そんなところで」

理亞「ほら。そんな誘拐犯のそばに居ないで、早く帰って練習を――」

茶髪「……理亞ちゃん。これ、何か分かる?」スッ

理亞「え――そ、それっ! 次の地区予選の衣装!?」

茶髪「小原さん。これ、持って行っていいですよ。条件付きで」

鞠莉「ワオ。じゃあ貰っちゃう。今のマリーは怪盗だし♪ ……ん? 条件?」

理亞「な……っ!? 何てことをするの、そんな大切なものを人に渡すなんて……っ!」

黒髪「理亞ちゃん。さっき黒澤さんはああ言ったけど、まだやってないことが残ってるでしょ」

理亞「や、やってないこと……?」

黒髪「勝負だよ」

116: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 20:13:38.67 ID:5UCDpwMN
黒髪「賭けよう、理亞ちゃん。賭けるものは、地区予選の衣装と私たち」

茶髪「理亞ちゃんが勝てば全部理亞ちゃんの手元に返る――衣装も、私たちも。でも」

茶髪「私たちが勝ったら衣装はなくなる。事実上、地区予選を辞退することになって、そして」

黒髪「私たちも、グループから抜けさせてもらう。……解散ってこと、だね」

理亞「な、……何を、言って」

茶髪「さあ――私たちと勝負だ、理亞ちゃん! 勝てば進めるかは分からないけど」

黒髪「負ければ終わりの勝負をしよう……!」

「「あなたに、ライブで真剣勝負を申し込む!!」」

理亞「は……? え?」

鞠莉「マーベラス! それなら是非マリーに審査をさせて。私情ゼロでフェアーな評価をしてあげる!」

ルビィ「……」

117: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 20:14:12.53 ID:5UCDpwMN
理亞「しょう、ぶ……? ライブで?」

理亞「な、何を馬鹿なこと、言ってるの……? 地区予選も目の前のこの大事な時期に、衣装がなくなるとか解散とか……」

理亞「意味が、分からない。だってあなたたちにメリット、ないし……」

茶髪「あるよ。この賭けの向こうに、私たちが本当に欲しいものがある」

黒髪「受けてくれるよね。理亞ちゃん」

理亞「いや、待って……待ってよ。何なの。解散なんて。そんなに……そんなに私と一緒にスクールアイドルやるのが嫌なの……?」

理亞「私が、ミスばかりするから……!?」

茶髪「そういうわけじゃないけど」

黒髪「何にせよ理亞ちゃんが勝てばいいだけだよ。勝つことが出来れば、それで円満……」

黒髪「……それとも、負けるのが怖い?」

理亞「それ、は……いや。勝てばいいとか、そういう問題じゃあ」

118: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 20:14:45.85 ID:5UCDpwMN
茶髪「まあ、勝負を受ける受けないは理亞ちゃんの自由。でも、どっちにしたって衣装は――」チラッ

鞠莉「せっかくだから貰っちゃう♪」

黒髪「そうなったら地区予選には出れないね。……覚悟を決めようよ、理亞ちゃん」

黒髪「私たちは本気だよ。本気で、この勝負に私たちのこれからを賭ける……!」

理亞「ぁ、ぅ……」

理亞(ま、待って。よく分からないけど、何が何だか分からないけど、冷静になれ、私……)

理亞(勝てば、いい。勝てばいいだけ。2人が何を考えているかは置いておいて、とにかく勝てばいいだけなら)

理亞(2人の実力はよく知ってる。この1年で全国にも引けを取らないレベルにまで成長した……けど、まだ私には及ばない、はず)

理亞(私が普段通りのライブをすれば、問題ない。実力の通りに出来れば)

理亞(ミスさえ、しなければ――)

理亞「……」ドクッ…

119: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 20:15:36.86 ID:5UCDpwMN
理亞(もし、ミスをしたら――? そうしたら、グループ解散……それで終わり)

理亞(いや。ミスだけじゃない。オーバートレーニングで私のパフォーマンスは落ちてるかも。今の私に実力が出し切れる?)

理亞(それに――そうだ。ここのところ自分のことで必死だったから、2人の練習をちゃんと見れてたわけじゃない)

理亞(2人は私が思ってるより成長してるかも……本当に、この2人に勝てるの? 負けたら終わり。勝たなきゃ)

理亞「……っ」ドクッドクッドクッ

理亞(勝たなきゃ。勝たなきゃ終わり。勝たなきゃ終わり。負けたら。負けたら。負けたら)

理亞(負けたら、全部、無駄になる――)

茶髪「――ねえ。今、負ける想像をしてるでしょ」

理亞「っ!?」

茶髪「負けるかもって、思ってるよね。私たちに」

理亞「だ、だって。そんなの……これでもし、負けたりしたら。それで終わりなんだから」

ルビィ「――負けないよ」

理亞「ル、ビィ……?」

120: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 20:16:05.82 ID:5UCDpwMN
ルビィ「理亞ちゃんたちのこと、チェックしてる。理亞ちゃんがいつも通りのライブをすれば、負けるわけない」

茶髪「はっきり言うなぁ」

黒髪「まあ事実だけどね」

理亞「……そうかも、しれないけど。そんなの、絶対じゃない……」

理亞「もしものこと。万が一。そんなことが起きてしまったら、それで終わり……終わりになるっ!」

理亞「もしもそうなってしまったら。私たちがやってきたことは、全部……!」

ルビィ「そんな“もしも”、ないよ」

理亞「気軽に言わないで! どうしてあなたにそんなことが言えるの!?」

ルビィ「ルビィの中に、理亞ちゃんがここで終わる“もしも”は無いから!」

理亞「……は?」

ルビィ「ルビィだけじゃないよ。みんな、そんな“もしも”は考えてない! 理亞ちゃんなら絶対に、決勝に進むって思ってる!」

ルビィ「お姉ちゃんも鞠莉ちゃんも果南ちゃんも! 千歌ちゃん、曜ちゃん、梨子ちゃん、善子ちゃん、花丸ちゃん、聖良さんも!」

ルビィ「それに誰より――あなたのファンが、それを信じてるんだもん!」

理亞「ファン……私の……?」

121: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 20:17:08.45 ID:5UCDpwMN
ルビィ「ねえ、理亞ちゃん。ファンの人たちって、どうしてスクールアイドルを応援してくれるんだと思う……?」

理亞「どうして、って。それは、歌とダンスに魅了されて……」

ルビィ「歌が聴きたいならミュージシャンでいい。ダンスが見たいならダンサーでいい。プロのアイドルだっているよ」

ルビィ「それでも。ミュージシャンでもダンサーでもプロでもない。ルビィたちを応援してくれる人たちがいるの」

ルビィ「ルビィたちが普通の女の子だって知ってるから、だから応援してくれる人たちがいるの……!」

ルビィ「どこにでもいる女の子が夢を追って一生懸命だから。だからファンの人たちは応援してくれてるの!」

ルビィ「ファンは、ルビィたちを見てくれてるの、ルビィたちを知ってるの!」

ルビィ「理亞ちゃんのファンは、理亞ちゃんのことを知っているから、だから理亞ちゃんのことを信じてるの――」

ルビィ「今日も最高のライブを見せてくれるんだって! 笑顔を届けてくれるんだって!」

理亞「なに、それ……ファンが、私を信じる……?」

理亞「いったい私なんかの、何を信じるって言うの……。そんなの、ただレベルの高いライブが見たいだけでしょ……」

ルビィ「なら、聞いてみたらいいよ。理亞ちゃんのファンに」

122: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 20:17:38.46 ID:5UCDpwMN
ルビィ「気付いてあげてよ……。ずっと辛そうにしてるファンの顔に」

ルビィ「大好きなアイドルが落ち込んでると、ファンだって辛いよ……」

理亞「それ、って」

茶髪「――理亞ちゃんは負けないよ」

理亞「……え」

茶髪「だって私たち、ずっと見てきたから。一年生の頃からずっとずっと、理亞ちゃんが練習してる姿を」

茶髪「初めて見たライブ、よく覚えてるよ。同い年のなんかちっちゃい子が、すごいカッコいいんだもん。びっくりした」

黒髪「そうそう。最初は、あれ誰?って感じだったよね。教室じゃあいつも無口で怖い顔してた子が……輝いてた」

茶髪「そっから追っかけ始めたんだよね。何でか理亞ちゃんには避けられてたけど」

黒髪「あれたぶん、私たちにいじめられるって思って逃げてたんじゃない?」

茶髪「ああ、そういう。ホント小動物だよね。練習中とライブ中は、あんなにカッコいいのに」

理亞「……もしかして。あなたたち」

123: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 20:18:12.22 ID:5UCDpwMN
茶髪「理亞ちゃんが負けるわけ、ないじゃん。もし、万が一にも負けるとでも思ってるんなら」

茶髪「――バカにするな……! 私たちの憧れを、スクールアイドル・鹿角理亞の努力の量を、バカにするなっ!」

茶髪「私たちの目標が、こんなところで終わるわけ、ないでしょうが!」

理亞「……!」

黒髪「知ってるよ。理亞ちゃんが積み重ねた練習を。我武者羅に夢を追ってきた姿を。私たちは知ってる」

黒髪「それを――その憧れた姿を、叶わなければ無駄だなんて言わないで! 私たちの憧れまで、無駄だったことにするつもり!?」

黒髪「私たちは知ってるよ! 練習するたび、ライブのたびに理亞ちゃんのパフォーマンスが磨かれてたこと!」

黒髪「そのたびに喜んだ私たちの想いまで、否定しないでよっ!!」

理亞「……2人とも」

ルビィ「ねえ、理亞ちゃん」

124: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 20:18:46.31 ID:5UCDpwMN
ルビィ「ルビィだってね。勇気があるわけじゃないよ。今だってステージに上がるのはちょっと怖い。……でも」

ルビィ「裏切れないよ。ルビィはスクールアイドルだから。ファンの思いには応えたい」

ルビィ「ファンの人たちがルビィを信じてくれるなら。ファンの人たちが知ってるルビィの、その全部を信じたい……」

理亞「信じる……全部を」


 『私たちは、いったい何に裏切られたの!?』


理亞「……あぁ、そうか」

理亞(裏切ってたのは、私か……。私は誰も信じてなかった――ファンも、私のことだって)

理亞(だからいつも不安だった。失敗するのが怖かった。上手くいかないことが怖かった)

理亞(怖くて怖くて、思うように身体が動かなかった)

125: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 20:19:25.72 ID:5UCDpwMN
ルビィ「ファンの人たちは、理亞ちゃんの努力を知ってるよ。遊びじゃないって、知ってるよ。その期待に応えてあげて」

ルビィ「ファンが信じる理亞ちゃんの努力を――信じてあげて」

理亞(……本音を言えばまだ、よく分からない。私のことをどれだけ信じていいものなのか。だって、私は何も残せてない)

理亞(けれど)


 『だから私も信じるの。0から1へ――夢中で駆け抜けてきたその道を』
 『理亞ちゃん。あなたは今、どこにいるの』


理亞(私が今いる場所が、0じゃないって知っている人がいる……それを喜んでくれる人がいる)

理亞(応えなきゃだ。私はスクールアイドルだから。私なんかに憧れてくれたファンのためにも)

理亞(私の努力を信じてくれるファンのためにも――私がしてきた努力は、努力してきた私は!)

理亞(私を裏切らないって、信じよう――!)

理亞「2人とも」

理亞「……勝負を、しよう。あなたたちに勝ってみせる」

126: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 20:19:55.19 ID:5UCDpwMN
理亞「あなたたちの憧れを、守ってみせる。スクールアイドル・鹿角理亞の全部を賭けて――必ず!!」

茶髪「――うん、望むところだよ!」

黒髪「私たちも全力でやるから。こんなところで躓くようなら、優勝なんてさっさと諦める覚悟でお願いね」

理亞「もちろん。手加減なんてしたら許さない。だって――」


 『メンバーの子たちと一緒に、全力で楽しもう!!』
 『未来を決めるのは――努力したあなた自身なんだから』


理亞「誰かと一緒に全力でやるのが、一番楽しいらしいから。それで勝っても負けても、恨みっこなし」

理亞「まあ、でも――私が勝つに決まってるけど」ニッ

ルビィ「うん。じゃあ、鞠莉ちゃん。準備お願いしていい?」

鞠莉「すでに準備OK! ミュージックとマイク、すぐ行けるよ!」

理亞「本当にフットワークが軽い……まあ、それはいいか」

127: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 20:20:24.59 ID:5UCDpwMN
理亞「……ねえ、ルビィ」

ルビィ「なあに、理亞ちゃん」

理亞「私、まだあなたたちに追いついたとは思ってないし、自分のこともまだ色々と考えることはある」

理亞「でも今は、私を信じてくれる人たちが知ってる私を、信じようと思う」

ルビィ「……うん」

理亞「それで、ルビィ。お願いがあるんだけど。私、ソロで歌える曲がないから」

理亞「もう一度私と、歌ってほしい。ここで、あなたと、もう一度始めたいの。私が私を信じるための今を、もう一度――」

ルビィ「うん。待ってたよ、信じてたよ――理亞ちゃんがここへ来てくれること!」

ルビィ「また一緒に歌おうって、約束だもん!」

理亞「……ありがとう。待っててくれて」

128: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 20:20:56.75 ID:5UCDpwMN
鞠莉「理亞。曲は何にする?」

理亞「決まってるでしょ。私とルビィの曲なんて、私たちが始めるための曲なんて、ひとつしかない」

ルビィ「うん――」


「「Awaken the power――!」」


鞠莉「OK! 思いっきり楽しませてね! ミュージック、スタート♪」

理亞(……誰にも過去を変えることは出来ない、か……。まだ姉様の言ってることを、完全に理解できたわけじゃないけど)

129: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 20:21:32.37 ID:5UCDpwMN
理亞「――始まるときは 終わりのことなど 考えてないからずっと♪」

理亞(過去の私に憧れて、ファンになってくれた人たちが確かにいるなら。その事実が、変わることがないのなら)

ルビィ「続く気がして 前だけ見つめて 走り続けてきたから♪」

理亞(まだ何も成し遂げられてない私だけれど)

理亞「ドコへ――♪」

ルビィ「ドコへ――♪」

理亞(過去の私を、こうして歌っている“今”くらいは誇っていたい)


理亞「次はドコへ行こう――♪」
ルビィ「次はドコへ行こう――♪」


理亞(そうすれば明日の私は、空を翔んでいけるかな……?)

理亞(雪の結晶のように輝くステージまで。最高の景色が見える場所にまで――)


 ――Come on! Awaken the power yeah!!
  Are you ready? ――Let's go!!

130: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 20:22:06.90 ID:5UCDpwMN
――――
――

~北海道地区予選会場、観客席~


 それでは、次の出場グループです。函館聖泉女子――

ダイヤ「あぁ……次がいよいよ理亞さんたちですわ……!」

鞠莉「落ち着きなよ、ダイヤ。あなたが慌てたってしょうがないでしょ?」

果南「そうそう。果報は寝て待てってね」

花丸「さすがに寝るのは失礼ずら――あ、出てきた、って。あれ。リボンの片方についてるのは」

ルビィ「善子ちゃんの羽根、だね。理亞ちゃん、あれ髪飾りにしたんだ」

善子「違うわよ、堕天使の羽根! ……くくく。いいでしょう我が眷属。今宵はこのヨハネの力、そなたに貸そう!」

曜「衣装もよく出来てるなぁ。面白いデザインかも」

梨子「曲、始まったね。あぁ……これが理亞ちゃんが作った曲……」

千歌「さあ、どうなるでしょうね。聖良さん」

聖良「ふふ。――まあ、なるようになりますよ」

131: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 20:22:46.11 ID:5UCDpwMN
ダイヤ「歌、始まりましたわ……!」

ルビィ「わぁ……! すごいすごい!」

聖良「ええ、いい動きです。昔よりも。……努力の成果が出ている」

聖良「あの子の、とても信じられない道の成果が」

千歌「信じられない?」

聖良「……私、努力と言うものは、自分を信じる人間にしか出来ないと思ってたんです」

聖良(すべてが自分の力になると。どこまでも自分を高めていけると。そう信じる者だけが努力できると――思っていた)

聖良(まさか、だ。まさかそうではない人間がいるだなんて、思ってもみなかった)

聖良(自信を見失い、努力に救いを求め、苦行の中に自分を埋める人間がまさか――こんな近くにいたなんて)

聖良(だって、信じられない。勝ちたいという思いだけで、自分が成長している実感もなく)

聖良(努力と言う言葉に縋って自分を痛め続ける毎日……そんな暗闇の針山を歩むような日々、私にはきっと耐えられない)

聖良(自分が歩いた道程も、流した血のあとも、何も見えない暗闇なんて――あまりにも、恐ろし過ぎる)

132: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 20:23:24.90 ID:5UCDpwMN
聖良(それでもあの子は耐えてきた。その辛い道をあの子は挑み、挑み続け、決して諦めはしなかった……)

聖良「……努力は、報われるとは限らない。努力は、私たちに何も与えない。努力はただ――」

聖良「ただベストを高めてくれるだけ。自分のベストがそこにあるのだと、そう示してくれるだけ」

聖良「だからこそ、理亞――!」ギュッ

聖良「あなたの歩んできた道は、積み上げてきたものは、その苦難は! 無駄になんてなったりしない!」

聖良「あなたの理想はもうそこにあるっ。あなたが自分を信じる限り努力は決して裏切らない――裏切られてたまるものか!」

聖良「――翔べ、理亞!!」


  ワー、ワー…!!

133: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 20:24:01.17 ID:5UCDpwMN
理亞(――曲が、終わった)

理亞(激しい呼吸。額を滑る汗。湧き上がる歓声。眩しいほどのライトステージ。乱れて踊るペンライト……)

理亞(……ようやく、意識が戻った。そうだ、ここは地区予選会場。私はライブをしてたんだ)

理亞(あぁ、楽しかった……なんかもう、それしか言葉が出て来ない)

理亞(自分のベストが、全力が、スクールアイドルが、こんなにも楽しい……)

理亞「あ――ふふっ」

理亞(観客席の姉様、ガッツポーズしてる。姉様ってあんなことするんだ……知らなかったな)

理亞(うん。それじゃあ、私も――)

理亞「……っ」グッ

黒髪「――理亞ちゃぁぁぁぁぁんっ!」ダキッ

理亞「わっ!?」

茶髪「やった、やったよ! 完璧だったよ私たち!!」

理亞「……ふふ」

理亞「もう。次のグループに迷惑でしょ。早くステージから降りないと」

134: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 20:24:32.39 ID:5UCDpwMN
黒髪「あっ、ま、待ってよ理亞ちゃん!」

理亞(努力は報われないかもしれない。もし私たちよりいいライブをするグループがいれば、私たちは当然のようにここで敗れる)

理亞(それは悔しい。ものすごく悔しくて、泣いてしまうと思うけど、でも)

理亞(それでもベストを置いて来たから。ファンの人たちの応援に、応えることは出来たと思うから。理想の自分に、近付けたから)

理亞(悔しくったって、きっと悔いはない)

理亞「さあ。着替えて反省会。完璧って言うけど改善点はたくさんある。練習メニュー、見直さないと」

茶髪「えぇー!? 今日くらい別にいいじゃん!」

理亞「ダメ。どんな時だって練習が第一。だって――」

理亞「努力は楽しい。私たちを裏切らないから」ニコッ


おしまい

136: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 20:26:44.34 ID:5UCDpwMN
これにておしまいです。読んで頂いた方、ありがとうございます
理亞ちゃんは超かわいいですが、泥臭くて最高にカッコ良くもあるのです。そんな理亞ちゃんを書きたかったのです
結局スクールアイドル全員がイケメンと化して相対的にアレな感じになった気もしますが。特にルビィちゃん

ともあれ、改めて理亞誕おめてとうございました

135: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 20:25:55.73 ID:32KA0LG6
ブラボー!

137: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 20:28:12.21 ID:32KA0LG6
キャラへの理解が凄いと思った
みんな生きてるみたい

138: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 20:31:15.74 ID:depO6Fxp
ジーンと来た

139: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 22:03:57.65 ID:je/MMwHD
こいつはヤベェや
本当に全員かっこ良かった

140: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 22:10:42.84 ID:7pUmMNBW
良かったぞ

142: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 23:42:49.37 ID:4g8gs4lN
いいものが見れた

141: 輝きたい名無しさん 2018/12/13(木) 23:35:01.20 ID:jwX8CzND
最高のss

引用元:http://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1544617837/










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2018/12/14 01:00 | SS | コメント(1)

この記事のコメント

  1. 名無しライバーさん:2018/12/14(金) 01:52:27
  2. 前編の聖良編含めて凄くいいSSだった
    正直こういうタイプのSS好きじゃないけど、それでも読んて良かった

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