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【SS】千歌「もしも」【ラブライブ!サンシャイン!!】

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1: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 21:51:45.10 ID:P5aXLf7n
高校生の頃、変な人に出会った。
その女の子はまだ肌寒い春の海辺で、必死に引き止める私をよそに「どうしても海に入る」って言って聞かなくて…結局2人で一緒に海におっこちた。

千歌「大丈夫?…沖縄じゃないんだから、海に入りたいならダイビングショップもあるのに…」

この田舎で同世代の初対面の女の子と話す事はあんまりなかったからできるだけ笑顔で言葉をかけて、優しくタオルを被せてあげた。

「…海の音が聞きたいの」

千歌「…海の音?」

変な人だと思った。
この時期の海に入りたいとか、その為に水着まで着てきたとか、終いには海の音?
私は海の音について問い立てたと思う。
でもそこから先は覚えていない。

あれから2年、私は地元を離れて都内の大学に入学した。

3: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 21:53:27.23 ID:P5aXLf7n
サークルはいわゆる飲みサーに入った。
田舎娘の私にとって都会は色々な事が新鮮で、サークルのおかげで都会育ちの友達がたくさんできたのが嬉しかった。

朝起きて、授業に出て、終わったらすぐ皆で遊びに行く…夜には自分が未成年って事なんてお構い無しで、大勢でお酒に溺れる。
ふわふわ歩いて家に着くと、頭の中で綺麗なピアノの音色が響く。
その音に聴き惚れているとなんだか眠たくなってきて…お風呂にも入らず、ベッドにも辿り着けず、ソファで死んだように眠る。

夢の中でもピアノは聴こえて、たまに私が私に問い掛けてくる。
これでいいのか、って。

4: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 21:55:06.78 ID:P5aXLf7n
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
千歌「ここら辺の高校?」

「…東京」

千歌「東京!?わざわざ!?」

「わざわざっていうか…」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

綺麗なピアノの演奏をバックにあの日の夢を見る。
あの子は結局なんだったんだろう、どうなったんだろう?

何かに夢中になりたくて、何かに全力になりたくて、脇目もふらずに走りたくて、でも何をやっていいのか、わからなくて…
くすぶっていた私のすべてを吹き飛ばしてくれる風は、結局吹いてくれなかった。

きっと1度会ったきりの彼女の事をまだ思い出すのは、彼女はあの時の私と違って夢中になれる何かを持っていたから。
あの子はきっと私と同じ普通の女の子だけど、私と違って全力で走れる物を持っていた。

あの子はきっと、ありえたかもしれない私の姿。

5: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 21:57:35.36 ID:P5aXLf7n
うるさい携帯のアラームを消して、気怠い体を無理やり起こす。もうピアノの音は消えていた。
前日体を洗っていない私は時計を見て急いでシャワーを浴びて、パンをくわえて学生アパートの部屋を出る。
本当はお母さんの所に転がり込んでも良かったけどなんだかそれじゃあ大学生っぽくない気がして、無理を通して借りた部屋だった。

大学まで走って、教室で友達と合流して、つまんない講義を半分寝ながら聞いて、今日も学校終わり。

千歌「ええ~?今日は飲みに行かないの?」
皆は今日は休肝日だって言ってたけど、多分昨日のお酒がまだ残ってるんだろうな。

トボトボ家に帰る。
思えば明るい間に帰宅するのはいつぶりだろう、サークルに入ってからはお酒を飲まなくても毎日皆と遊んでた。
たまには1人で過ごすのも…


ポロン、と音が聞こえた。

7: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 21:59:08.26 ID:P5aXLf7n
扉に鍵を差した時だった、それはどこからともなく聴こえてきた。
遠くで鳴っているのか、とても小さな音だけど確かに私の耳に届いている。

私が毎日聴いていたのは酒による幻聴じゃなくて本当の演奏だったんだなぁと少し感心し部屋に入り、夜中もピアノ弾くなんて近所迷惑もイイトコだよ、と靴を脱ぎながら独り言を吐いてソファに腰掛けた。

部屋の中でも演奏は小さな音でわずかに聴こえた。
意識して耳を傾けなければ聴こえないくらいの音だったけど、私は夢中で聴き続けた。
音が鳴っている側の部屋は角部屋だから、きっとお隣さんが弾いてるんだなぁ、私は目を閉じて色んなことを考えた。

8: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 22:00:40.13 ID:P5aXLf7n
東京に来てから私は何か成長したのだろうか?
大人には近付いたと思う、髪も伸びてきたし耳たぶにピアスも開けて、お化粧だって覚えた。服だって都会っぽいちょっと派手な服を着ているし…でもなんだか納得できない。
なんの目標もなく遊んでばかりで毎日自堕落なのはわかってるし、何かしなくちゃいけないのはわかってるけど、何をしたらいいのかわからなくて…
もしかしたら私はあの時からちっとも…

ぐぅ~、と真面目に思い悩む私を嘲るようにお腹が鳴った。それにいつの間にかピアノの音も止んでいた。
そうか、今日は外食して帰ってきた訳じゃないからお腹がすいてるのか。
当たり前の事を忘れていた私は自炊もできないので安物の財布片手にコンビニに向かうことにした。

9: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 22:02:26.41 ID:P5aXLf7n
扉を開けて外に出ると、お隣さんの方からガチャっと音が鳴った。
せっかくの機会だしピアノの感想でも言ってお隣さんとも仲良くなろう、少しずつ開く扉からその人の姿が見えるまでの時間が物凄く長く思えた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
千歌「あ…私、高海千歌!あそこの丘にある浦の星女学院って高校の2年生!」

「同い年ね」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



あの時私に吹かなかった風が2年も遅れてやっと、くすぶっていた私のすべてを吹き飛ばし…舞い降りた、気がした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「私は桜内梨子、高校は…音ノ木坂学院高校」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

10: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 22:03:43.47 ID:P5aXLf7n
千歌「…桜内…梨子ちゃん…?」

梨子「…そう、ですけど…」

突然の事で混乱して何を話せばいいかわからない。
ずっとぼやけていた彼女の名前が、声が、今ハッキリと思い出せる。
うまく視線を合わせられずにドギマギしていると、彼女が心配そうに顔を覗き込んできた。

梨子「えっと、お隣さん、ですよね?」

千歌「…あ、う、はい!ここに住んでる高海千歌って言います!」

梨子「高海千歌さん…初めまして」

千歌「は…初めまして」

梨子「…」

千歌「…」

梨子「…私これから夕飯の買い物に行くので、また…」

千歌「あ、はい…」


少しでも期待していた自分が情けなかった。

11: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 22:04:59.32 ID:P5aXLf7n
桜内梨子ちゃんは私とは違う。
何をやるべきかわかっていて、それに向かって全力で走って来たんだろう。
私みたいな普通の、脇役みたいな人間の事を覚えているわけがない。

私があの時偶然出会った桜内梨子ちゃんの事をずっと覚えていたのは、あの子が特別な人間だから。
きっとあの子が輝いて見えたから私はあの子のことを忘れられなくて、でも少し妬ましかったから、名前だったり会話の内容だったり、そんな事は全部忘れたふりをして…

私は結局あの子に追いつけないまま、普通のままで桜内梨子ちゃんにまた出会ってしまった。

きっと彼女は2年の間に色んなことに挑戦して、経験したんだろう。私がなんとなく生きている間もずっと、ずっと…


気付けばお腹なんてとっくに鳴り止んでいて、代わりに泣いていた。

13: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 22:07:35.31 ID:P5aXLf7n
「…あの」

千歌「っは、はいっ!」ビクッ

零れる涙を必死に拭って肩を叩いた人の方を向くと、桜内梨子ちゃんが心配そうに私を見ていた。

梨子「…鍵閉め忘れちゃって…あの、本当に大丈夫ですか?」

千歌「…っ、うんっ、だいじょぶ…」ゴシゴシ

頑張って涙は拭いきったけど、桜内梨子ちゃんは涙で濡れた私の袖を見て神妙な顔をして、そして私の目を見て名前を呼んだ。

梨子「高海千歌さん」

千歌「んっ…うん!何?」

梨子「…浦の星女学院の、高海千歌さん?」

千歌「………う…ん」

嬉しいのかなんなのか分からない間抜けな顔をしてたと思う。私自身どんな気持ちになったか説明できない。
彼女が覚えていてくれた事は私にとって

梨子「…私」

千歌「知ってる…知ってるよぉ…音ノ木坂学院のっ…」ポロポロ

梨子「…うん、久しぶり」

奇跡だった。

14: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 22:09:19.68 ID:P5aXLf7n
また会えたのが泣くほど嬉しいの?とか、せっかくお化粧してるのに涙でぐしゃぐしゃになっちゃうよ?とか、梨子ちゃんは呆れ混じりに色々声をかけてくれた。

梨子「...とりあえず落ち着くまでうち入っていいよ」

ついには泣きじゃくる私を見兼ねて部屋に入れてくれた。梨子ちゃんの部屋には大きなピアノがあるだけで、ベッドはおろか椅子もピアノの椅子しか無かった。

梨子「ごめんね、殺風景な部屋で」

千歌「ううん…嬉しい、ありがとう」

とりあえず座って、と言われて私がピアノの前に座ると梨子ちゃんはあの時みたいに地べたに3角座りをした。

15: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 22:10:10.85 ID:P5aXLf7n
梨子「驚いたなぁ、お隣さんが本当にあの時の高海千歌さんだったなんて」

千歌「…本当に、ってどういうこと?」

梨子「表札でね、隣に住んでるのが高海って苗字なのは知ってたから…もしかしたらって思ってたんだ」

千歌「表札…」

梨子「…あ、高海さんが私の所の表札知らないのは仕方ないよ、ほら、私の部屋って角部屋だから…」

梨子ちゃんの部屋が角部屋だから知らなかったんじゃない、私が周りに興味無くて、見るつもりなんて無かったから知らなかったんだ。
もし私がもっと真面目な生活をしてたら、もしかしたらもっとずっと前に梨子ちゃんと…

千歌「...じゃあさっき鉢合わせた時、なんですぐ気付いてくれなかったの?」

16: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 22:12:57.82 ID:P5aXLf7n
梨子「えっと…それは…」

千歌「…?」

梨子「見た目が…ほら、都会っ子って感じだったし…雰囲気が全然違ったから…髪も明るいし」

千歌「か...髪は地毛だよ?」

梨子「そうなの?夕日でその色に見えるんだと思ってた」

千歌「…私は一目で梨子ちゃんってわかったよ」

梨子「覚えててくれたんだ」

忘れるわけない、と言いそうになった時ふと思った。梨子ちゃんはどうして私の事を覚えていてくれたんだろう?

千歌「…ピアノの音も聴こえてたし」

梨子「…あ、聴こえてた…?」

17: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 22:14:15.51 ID:P5aXLf7n
梨子「一応部屋中防音加工して色々対策してるんだけど…やっぱりダメだったかぁ…」

だからこの部屋はなんだか窮屈なんだと思った。
よく見たら四方八方の壁になんだかゴツゴツしたマットみたいな物が貼ってある。

千歌「あ、でもホントにほんの少し聴こえるだけだよ、多分隣の隣までは聴こえてないんじゃないかな」

梨子「そうだとしてもなんだか悪いわ、高海さんの部屋には漏れてたんでしょ?」

千歌「…それはいいの」

梨子「…いいの?」

千歌「私、梨子ちゃんのピアノ好きだから…」

梨子ちゃんは一瞬不意を突かれたようにキョトンとした顔をしてからすぐに立ち上がって、私の座っているピアノの椅子に無理やり詰めて座ってきた。

18: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 22:17:18.63 ID:P5aXLf7n
千歌「せ、狭い…」

梨子「いいからいいから、今までのお詫びに1曲弾いてあげる」

私が何か言う前に梨子ちゃんは流れるような手つきで鍵盤に触れた。
防音壁越しではない、生の音が部屋に響く。

息を飲んだ。これが梨子ちゃんのピアノなんだ。
梨子ちゃんは目を閉じて、踊るように体を動かしてピアノを弾いている。
たまに私と肩や肘が触れると、薄く目を開けてこちらに微笑みかけてくる。

私は感動と同時に何か大きな黒い感情を覚えた。
私に無いものを持っている事への羨望なのか嫉妬なのか、とにかく私はそんな事を考えてしまう自分が嫌になって頭をぶんぶん振っていると、梨子ちゃんが隣でクスリと笑った。

19: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 22:18:21.55 ID:P5aXLf7n
ピアノの音が止んでから、私は梨子ちゃんの肩に頭を寄せた。
まるで旧知の親友のような距離感で少し変かなと思ったが梨子ちゃんは気にせず拍手を求めていた。

梨子「もう、人が演奏し終えたら拍手でしょ?まったく…」

なんだかご立腹みたいで、膝の上にきちんと置いている白い手に私は優しく自分の手を重ねた。
すると梨子ちゃんはハッとして顔を赤らめて、つい熱くなってしまったと言ってなんだかむず痒い表情をする。
そんな梨子ちゃんを見て私も少し笑う。

なんだか長い間忘れていた懐かしい、でも初めての時間が流れていた。

20: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 22:20:34.29 ID:P5aXLf7n
ひとしきりふざけた後、私が梨子ちゃんの膝の上で重ねていた手の上に今度は梨子ちゃんが手を置いて、上から握ってきた。

少しびっくりして梨子ちゃんの顔を見るとなんだか真剣な顔をしてこっちを見ている。

梨子「…高海さん、あの時はありがとう」

千歌「…あの時?」

梨子「うん、初めて会った時」

千歌「…そんなにしっかり覚えてるの?」

梨子「もちろん」

千歌「…どうして?私なんて…ただの…」

梨子ちゃんから目を離して少し俯くと、握られていた手が急に自由になって、突然ほっぺたが梨子ちゃんの両手でぎゅむっと潰されてそのまま無理やり顔を上げさせられた。

千歌「り、りこひゃ…」

梨子「高海さんは…普通怪獣なんかじゃないよ」

千歌「へ…」

梨子「…だって私の悩みを吹き飛ばして、前に進ませてくれたじゃない」

千歌「…わた…ひが…?」

ほっぺたから梨子ちゃんの両手が離れる。
今度は私の両手を持ち上げて…

梨子「そう、私が今こうしていられるのはあなたのお陰だよ」

22: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 22:22:40.65 ID:P5aXLf7n
千歌「…私、梨子ちゃんとあの時出会った事はずっと覚えてたし…ずっと考えてたの。でもあの時何を話したとか、そういうのは思い出せなくて…」

梨子「…高海さんは」

千歌「千歌」

梨子「へ?」

千歌「高海さんはやだ、千歌がいい」

梨子「…千歌ちゃんはあの時、作曲がうまくいかなくてスランプに入ってた私を立ち直らせてくれたの」

千歌「…私が…」

梨子「思い出せないかもしれないけど本当だよ」

23: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 22:24:27.67 ID:P5aXLf7n
千歌「そっか…私、梨子ちゃんを...」

梨子「うん、そういうこと」

千歌「…自分は何もできなかったのに、ね…」

梨子「…」

途端に黒い感情が込み上げてくる。
今度は梨子ちゃんへの嫉妬なんかじゃなく、自分に対しての…怒り。

千歌「私なんて梨子ちゃんが頑張ってる間なんにもしてこなくてさ…心機一転って思ってた大学でも遊び呆けて…」

千歌「…私はなんにもなれなかったんだよ、なんにも…」

25: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 22:26:25.72 ID:P5aXLf7n
梨子「…じゃあ今度は私が千歌ちゃんのモヤモヤを吹き飛ばしてあげる!」

千歌「…梨子ちゃんが?」

梨子「私じゃ不満?」

千歌「そういう事じゃないけど…」

梨子「じゃあ何?」

千歌「…私なんかに構ってなくていいんだよ、梨子ちゃんにはピアノっていう大事な事が」

梨子「千歌ちゃん」

千歌「…はい」

梨子「…私にはピアノと同じくらい…それよりもっと千歌ちゃんの事も大事なの」

千歌「…」

梨子「千歌ちゃんは私を救ってくれた…特別な人なんだから」

千歌「…とく…べつ…」

普通だった私が、初めて特別になれた瞬間だった。

26: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 22:28:26.23 ID:P5aXLf7n
それから


千歌「梨子ちゃん!!私の部屋で寝泊まりするのやめてって言ったじゃん!」

梨子「うぅ…だって自分の部屋で床に布団敷くより千歌ちゃんの部屋のベッドの方がいいし…」

千歌「私の部屋は旅館じゃないの!!」

しばらくして私たちはすっかり打ち解けて、2人とも大学は違うけど、梨子ちゃんは私の為に私の興味がありそうな事を探してきて毎日のように訪ねて来るようになった。
本当は梨子ちゃんが私のことを特別だって言ってくれたから、もうそれだけで十分色々吹き飛んだけど…

千歌「梨子ちゃん」

梨子「んー?」

千歌「…ありがとうね」

梨子「…こちらこそ」クスッ

今はしばらくこのままでいいなって思います。

27: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 22:30:19.07 ID:P5aXLf7n
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
高校生の頃、変な人に出会った。
その女の子はまだ肌寒い春の海辺で、必死に引き止める私をよそに「どうしても海に入る」って言って聞かなくて…結局2人で一緒に海におっこちた。

千歌「大丈夫?…沖縄じゃないんだから、海に入りたいならダイビングショップもあるのに…」

梨子「…海の音が聞きたいの」

千歌「…海の音?」

梨子「うん…」

千歌「…どうして?」

梨子「……」

千歌「…分かった、もう聞かない!……海中の音って事!?」

梨子「…ふふっ…私、ピアノで曲を作ってるの。でもどうしても海の曲のイメージが浮かばなくて…」

千歌「ふぇ~曲を…作曲なんてすごいね!…ここら辺の高校?」

梨子「…東京」

千歌「東京!?わざわざ!?」

梨子「わざわざっていうか…」

千歌「?」

梨子「今度ここに引っ越してくるの」

28: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 22:31:22.93 ID:P5aXLf7n
千歌「ほんとに!?東京から!?」

梨子「…ピアノの調子がね、あんまりよくなくて…親がスランプの療養にって」

千歌「…そっか…」

梨子「私、ずっとピアノばかりやってきたから…ピアノ以外何もできないから…せめて…」

千歌「…私は凄いと思うな」

梨子「…え?」

千歌「私はあなたみたいにずっとピアノを頑張ってきたとか、大好きなことに夢中でのめり込んで来たとか…将来こんな風になりたい!って夢があるとか…そんなのひとつも無くて…」

梨子「…」

千歌「…私ね、普通なの」

29: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 22:35:36.13 ID:P5aXLf7n
千歌「普通星に生まれてきた普通成人なんだって、どんなに変身しても普通なんだって」

千歌「そんな風に思ってて、それでも何かあるんじゃないかって思ってたんだけど…気が付いたら高2になってた」

千歌「まずいっ!このままじゃ本当にこのままだぞ!普通成人を通り越して普通怪獣ちかちーになっちゃうー!…って!ガオー!」

梨子「おわっ……」

千歌「…えへへっ」

梨子「…ふふっ」

千歌「…だからあなたみたいに私と同年代で夢を持ってる人を見るとちょっぴり羨ましいなって思っちゃう、つまずいても前に進もうとしてこんな寒い海に飛び込もうとする人なんて特に」クスッ

梨子「……」

千歌「それだけの想いがあるあなたはきっと大丈夫だよ、それで私もいつか何かになってキラキラ輝いて…あなたの隣に並んでみたい」

梨子「……ありがとう、何か頑張れって言われた気がする」

千歌「ほんとに?」

梨子「えぇ…本当に」

千歌「…あ…私、高海千歌!あそこの丘にある浦の星女学院って高校の2年生!」

梨子「同い年ね、私は桜内梨子。高校は…音ノ木坂学院高校」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

30: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 22:36:44.28 ID:P5aXLf7n
梨子「ねぇ千歌ちゃん、本当にやりたい事見つからないの?」

千歌「見つかんないなぁ…私普通怪獣だから」

梨子「こーら…何かやってみたい事、なんでもいいから言ってみてよ。私も付き合うよ?」

千歌「……あ」

梨子「?」

千歌「梨子ちゃんと…海の音聞きたい」

梨子「海の音…」

千歌「うん」

梨子「...どうして?」

千歌「結局聞けなかったんでしょ?海の音」

梨子「まぁそうだけど…」

千歌「じゃあ決まりだね!久々に地元に帰るぞー!」

31: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 22:36:52.43 ID:P5aXLf7n
おわり

33: 輝きたい名無しさん 2020/06/28(日) 23:46:03.63 ID:ANmtF2hd
とても良きだった

34: 輝きたい名無しさん 2020/06/29(月) 00:21:44.03 ID:FzXvwujd
乙でした
よかった

36: 輝きたい名無しさん 2020/06/29(月) 05:22:03.34 ID:08B3mFYz

こういうパラレルも好きよ

引用元:https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1593348705/






『ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』「無敵級*ビリーバー」 (BD付)
中須かすみ(CV.相良茉優) from 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会
ランティス
2020-07-29




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