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【SS】ルビィ「子供の頃、ルビィの家の庭には座敷牢があったんだ」【ラブライブ!サンシャイン!!】

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1: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:18:57.48 ID:Slrltcd2
ルビィ「座敷牢とは言っても、当時は迷子の犬や野犬を保護しておくための場所になっていたの」

ルビィ「ペットの犬なら……その時はまだ平気だったんだけど、野犬ってなんだか怖いよね……。鳴き声もバウバウ吠えて荒々しいし、だからルビィは座敷牢には近寄らないようにしてたんだ」

ルビィ「お姉ちゃんはどんな犬が捕まったか興味があったみたいだけど、危ないから側に行っちゃダメだってお父さんに言われて、まあそれほど見たいわけでもなかったんじゃないかな、言い付けを破ることはなかったと思う」

ルビィ「ある日ルビィが小学校から帰ってくると、家には誰もいなくて」

2: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:19:31.93 ID:Slrltcd2
ルビィ「町内の会合でもあったっけ、と思いながら庭を通り過ぎて玄関へ向かうと、座敷牢からキャンキャンって可愛い子犬の鳴き声がしたの」

ルビィ「それで、そんな可愛い鳴き声の犬が野犬のはずがないから、珍しく座敷牢を覗いてみたんだけど」

ルビィ「でも、そこに子犬はいなくて……」

ルビィ「ルビィ!そんなところで何をしているの!?」

ルビィ「ちょうど会合から帰ってきたお母さんが、これまで聞いたことの無いくらい大きな声でルビィを怒鳴ってきてね」

3: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:19:54.61 ID:Slrltcd2
ルビィ「何でもないよ!通学帽子が風で飛ばされたから取りに来ただけ!……咄嗟についた嘘だったけど、お母さんは信じたみたいで、座敷牢には絶対に近寄ってはなりません、ってルビィ何度も叱られちゃった」

ルビィ「そんなに叱られたのは初めてだったから何だか悲しくなってきて、こっちを見上げる人の顔をした犬のことは結局聞けずじまいだったんだよ……」

ルビィ「もしかしてあれって人面犬なのかなぁ、だからお父さんもお母さんも近寄っちゃダメって言ってたんだ……それ以来、男の人も犬も苦手になったんだぁ……」

4: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:20:17.05 ID:Slrltcd2
鞠莉「What!?子供の頃の不思議な出来事?うーん……あっ、そうだ!人体の神秘って言うの?マリーがポジティブに生きていこうって決めたきっかけなんだけどね」

5: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:20:39.36 ID:Slrltcd2
鞠莉「ある時から私は、淡島に建てられたホテルの自室にいると、重い耳鳴りに悩まされるようになったのよ」

鞠莉「特に夜間が酷くて、はじめのうちはガリガリと頭骨を削るような音が響いて、しばらくするとそれは釘をトンカチで叩くような音だったり、歯医者や土木工事で使われるドリルを思わせる金属音といったように、複数の轟音の組み合わせになったの」

鞠莉「あんまりにもはっきりと聞こえるから、現実に鳴らされている音じゃないかって疑ったんだけど、パパは淡島で工事が行われるとは話していなかったし、事実、暇があれば島を探索してみたものの、やっぱり開発途中にある土地や施設は無かったわけ」

6: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:21:05.00 ID:Slrltcd2
鞠莉「沼津の病院に勤める先生に往診をお願いしても、ちょっとした心の疲れだろう、と仰るばかりで、診療の度に睡眠薬を数錠貰って飲んでみたけど耳鳴りは収まらなくてね」

鞠莉「霊障も疑って、内浦で住職をしている方にお祓いをしてもらったけど、それでも改善はしないのよ」

鞠莉「夜、寝ようとする頃になると、頭の中を滅茶苦茶にシェイクする音の洪水に襲われて、その音が私はとても怖くて、しかも気にすればするほど、日増しに大きく鳴り響くから堪らないわよ」

鞠莉「そんな私を見かねたパパは、イヤホンと音楽プレーヤーをプレゼントしてくれたの」

鞠莉「耳にイヤホンを着けて音楽を流すと、瞬間ドキッと胸が跳ね上がったのをよく覚えているわ」

7: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:21:36.89 ID:Slrltcd2
鞠莉「だってそのとき、ヘヴィメタルという音の嵐に紛れて、頭の中で聞こえる耳鳴りそっくりの雑音が、その背後で鳴り響いていたんだから!」

鞠莉「それはインダストリアルメタルだよ、とパパは言ったわ」

鞠莉「チェーンソーの音や工場の機械音、金属を叩く音のような高い周波数の雑音が音楽として再構成されているジャンルなのよ」

鞠莉「目に見えない恐怖に打ち克つには、その恐怖を楽しんでしまえばいい、パパはそう言って笑っていたわ」

鞠莉「娘の立場でこうして褒めるのも気が引けるけど、パパは多くのホテル事業を展開する成功者だけあって、逆境を乗り越える術をよく知っているのよね」

8: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:22:05.14 ID:Slrltcd2
鞠莉「私はすっかりインダストリアルメタルを気に入って、ベッドに横になりながらよく聴いていたわ」

鞠莉「パパから音楽を勧められて以来、金属音を耳障りに思わなくなったせいか、耳鳴りに悩まされることは減っていったの」

鞠莉「いつだったか、ベッドから起き上がろうとした拍子に体勢を崩して、イヤホンのコードを引っ掛けちゃったことがあってね」

鞠莉「その勢いで耳からイヤホンが外れると、最近は聞こえることの無かった耳鳴りがまた起こり始めたんだけど、数秒と経たずにその音はさっと収まったの」

鞠莉「やっぱり金属音を楽しみだしたお陰だな、と改めて解決策を与えてくれたパパへの敬意が深まったわ」

9: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:22:25.06 ID:Slrltcd2
千歌「もう10年は前になるかな、少し恥ずかしいんだけど、うちの経営が苦しかったとき、親戚の援助のおかげで旅館業を営むことが出来ていたみたいで」

10: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:22:59.52 ID:Slrltcd2
千歌「と言っても、当時は毎晩その親戚の集まりしか利用していなくて、夜から明け方まで宴会を開いては騒いでいたんだよね、それが酔っ払っては大声で暴れたりするもんだから、ちょっと怖かったんだ」

千歌「親戚がうちに来ると、両親もお姉ちゃんたちも私に構ってくれなくなるから、果南ちゃんと二人で裏山に登って星を見ていたの」

千歌「山頂の神社の片隅に、ちょうど木の枝が途切れた空間があって、そこからだと空がよく見れるからね」

千歌「覆い繁る木々からぽっかり顔を覗かせた空が、千歌と果南ちゃんのために夜空を切り取った絵画みたいで、飽きずに毎日見ていたなぁ」

11: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:25:00.46 ID:Slrltcd2
千歌「それで、いつもは鳥居をくぐって、本殿までの参道を登っていくんだけど、その日は果南ちゃんがおかしなことを言うんだよね、山の奥から塩辛の匂いがするって」

千歌「夜も遅いし、迷子になったら困るよって言ったけど、果南ちゃんは心当たりがあるって言って聞かないから、その匂いの元を探るために、参道から脇に逸れた道を探索し始めたんだよ」

千歌「果南ちゃんのおじいちゃんが若い頃、その山の中腹には底の見えないほど深い井戸があって、その中には、本殿に祀られた神様とはまた別の土地神様が住んでいるって言い伝えがあったらしくて」

千歌「その井戸に内浦の人たちは、漁で獲れた魚とか、網に掛かった亀やタコ、あとは町をうろつく野良猫なんかを投げ込んで供物にしてたみたい、最近は見ないけど、港町だから漁師をあてにした野良猫が多くいたんだってさ」

12: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:25:27.40 ID:Slrltcd2
千歌「果南ちゃんは、きっとその供物が発酵した匂いだよ、まだ参拝客もいたんだって駆けていっちゃってさ、そんなの見たくないじゃん、でも、暗い山の中で一人で待つのも嫌だから渋々付いていったんだ」

千歌「そうしたらそのうちに拓けた場所に着いて、そこにあったんだよ、朽ちた木の屋根に覆われて佇む古びた井戸が」

千歌「きちんと蓋がしてあるのに腐ったような匂いがぷんぷんしてさ、それなのに果南ちゃん、蓋を開けてみようなんて言い出すんだよ」

千歌「千歌はやめなよって言ったんだけど、何かいつもの果南ちゃんじゃなかったなぁ、瘴気にあてられるっていうのかな、脇目も振らずに井戸に駆け寄って蓋を下ろしたんだ」

千歌「その瞬間、もう言葉に言い表せないほどの悪臭が立ち込めて、気持ち悪くなってその場で戻しちゃったんだよ」

13: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:25:54.25 ID:Slrltcd2
千歌「一方で果南ちゃんは匂いを何とも思わなかったのか、一心不乱に井戸を覗き込んでて」

千歌「そしたら何か思い当たったのか周りを見渡して、近くの木の樹液を吸いに集まってきたカブトムシやカナブンを掴んで井戸に投げ込んだの」

千歌「途端に、ギャアアアアアア!!って果南ちゃんが叫ぶから何事かと思ったよ!」

千歌「もうそこからはガタガタ震え続けて全然話も出来なくてさ」

千歌「落ち着いてきたからもう帰ろっかって話して、何が見えたか帰り道で聞いたんだ」

14: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:26:24.71 ID:Slrltcd2
千歌「そうしたら果南ちゃん、暗くて陰になってたけど、カブトやカナブンを取り合うように無数の腕が伸びてくるのが見えたって」

千歌「千歌を怖がらせようとそんなデタラメ言ったのは分かるんだよ?だって井戸の中に人がいるわけないじゃん?それともそれが神様なの?」

千歌「でも、嘘だとしたら果南ちゃんは何を怖がったんだろうって、だけど井戸の中は見たくないし」

千歌「家に帰ってからお母さんに聞いたけど、そんな井戸の話は知らないって言われてさ、そのうちに旅館の経営が安定してきたら親戚も来なくなって、果南ちゃんと星を見に出掛けてたことすら忘れちゃってたよ」

15: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:26:59.63 ID:Slrltcd2
果南「……井戸?そんなことあったかなぁ、昔のことって全然覚えてないんだよね、あはは」

17: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:27:26.78 ID:Slrltcd2
果南「そうだ、ひとつだけはっきりと覚えてることがあるよ、不思議な感覚に見舞われた体験」

果南「スキューバダイビングを初めてしたのは小学生の頃だったんだ、それまでは他の人と同じように、学校のプールや海の浅いところで軽く泳ぐくらいしかしたこと無かったけどさ」

果南「でも実家がダイビングショップだし、ちょっと興味あるかも、なんて話したらその日のうちに道具を準備してくれたんだよね」

果南「そうして説明を受けて数日してから、いざ入水」

果南「あの感覚ってAqoursのみんなにも経験してもらいたいんだよなぁ、人間って地上だけじゃなくて、水中も活動範囲だったんだって、文字通り世界が広がるよ」

18: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:28:17.23 ID:Slrltcd2
果南「海に潜ってるときはもちろんだけどさ、本当に凄いのは陸地に戻ってからなんだよね」

果南「あれ?私って今までこの土地で暮らしてきたんだっけ?」

果南「海の中って異次元異世界、全く別の空間だけど、そこを経由して地上へ帰ると、地上こそが別世界に感じるんだ」

果南「私がダイビングしてる間に天変地異でも起きて景色が変わってしまった、なんてことでは絶対無いんだよ?」

20: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:28:47.85 ID:Slrltcd2
果南「でも、何かが違う」

果南「これって、私の中の世界の見え方が変わったからなんだ」

果南「Aqoursもそうだよ、だってAqoursって水だからさ」

果南「水の中に一旦潜って、そうして目にした元の世界は、とてつもなく輝いて見えるよね」

21: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:29:17.63 ID:Slrltcd2
ダイヤ「鞠莉さんのお母様がわたくしと果南を嫌っていたのは、その背後に黒い影が見えたからだそうで」

22: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:29:45.42 ID:Slrltcd2
ダイヤ「あのように実業家の外国人と結婚なさって、娘の将来を憂慮して現実的な教育を施す方が、まさか幽霊やオーラだなんてものを信じているとは、開いた口が塞がりませんでしたわ」

ダイヤ「絶対にうちの子をあなたたちと仲良くさせたくない、主人は子供のためだって言うけどこんなところに来たくなかった、と言って泣き叫ばれまして、果南さんと顔を見合わせて困惑しましたの」

ダイヤ「ですが、子供だからってそんな風に怖がらせても無駄だよ、なんて果南さんが言うものですから、鞠莉さんのお母様もむきになって」

ダイヤ「わたくしも、一体黒いオーラとはどのように見えているのか気になったので、そう尋ねてみましたわ」

23: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:30:22.72 ID:Slrltcd2
ダイヤ「しばらく言い淀んだ後、意を決したのか口を開きましたが、そこで語られたものはわたくしと果南さんの印象に対するものではなく、鞠莉さんのお母様がイタリアで経験した、何ともおぞましい体験だったのです」

ダイヤ「彼女はイタリアの大学へ通っていたそうで、旦那様、つまりは鞠莉さんのお父様と知り合ったのも、その大学の開く講習会に参加したことがきっかけだと伺いました」

ダイヤ「その集まりを通して出来た友人に、彼女と同学年でありながら、学生結婚を果たした一組の夫妻がいたのですわ」

ダイヤ「仮に夫をブルーノ、妻をアイーダとしましょうか、ブルーノの両親はアイーダとの結婚に強く反対したようで、二人は駆け落ちの形で無理に結婚まで漕ぎ着けたそうです」

24: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:31:07.29 ID:Slrltcd2
ダイヤ「仲睦まじく夫婦生活を送っていたのですが、アイーダはブルーノと出会う以前、男遊びの激しい女性との噂が立っていて、結婚後しばらくして、彼女が別の男性と歩いていたなどという目撃談が日増しにブルーノの元へ届き始めたのです」

ダイヤ「ブルーノはアイーダを問い詰めるような真似はしなかったものの、と言うのもアイーダがその噂を否定していたのでそれを信じたからですが、内心疑念は膨らんでいったのでした」

ダイヤ「アイーダは鞠莉さんのお母様にも相談なさって、身の潔白を証明するために日頃二人で行動することを心掛けたそうです」

ダイヤ「そうしてアイーダと過ごすうち、不可思議な出来事に遭遇し始めました」

25: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:31:44.62 ID:Slrltcd2
ダイヤ「どうも二人でいるときに誰かの視線を後ろから感じる、けれど振り向いても誰もいない」

ダイヤ「アイーダと遊んでから自室へ戻ると、消したはずの電気が点いていたり、玄関に自分のものではない長い髪が落ちている、手にとってよく見るとそれはアイーダの髪の色によく似ている」

ダイヤ「気味が悪くなったものの、アイーダに余計な心配は掛けられないと、伝えずにいたそうですわ」

ダイヤ「ただ、得体の知れない、自分の手に負えない悪意に巻き込まれ始めているのを感じて、アイーダには悪いと思いながらも距離を置くようになりました」

26: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:32:16.13 ID:Slrltcd2
ダイヤ「それに、そうして二人でいたはずの時間にアイーダが別の男性と喫茶店にいたなどといういくつかの話が、相変わらずブルーノの元へと、同期の学生や近所に住む世話好きの女性などから渡っていたことも、薄気味悪さに追い討ちを掛けましたの」

ダイヤ「いい加減ブルーノも嫌気が差してきて、自分に対して隠していることがないか、アイーダに確認をとりました」

ダイヤ「するとアイーダは、噂にあるようなことは身に覚えがない、ただ、あなたと知り合う前に一度、恋人との間に出来た子供を堕ろしたことがある、と言ったのです」

ダイヤ「どうして今さらそんなことを言い出すのかとブルーノが怒ると、今はお腹の中にあなたとの子がいるからよ、とアイーダは返しました」

ダイヤ「散々噂に翻弄され、心からアイーダを信じることの出来なくなっていたブルーノは、行き場のない気持ちの発露に、アイーダを殴り付けてしまいました」

28: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:32:45.80 ID:Slrltcd2
ダイヤ「アイーダは本当に、結婚してからは他の男性と関係を持ったことも、それどころか異性と二人で外出したことさえなかったのです」

ダイヤ「しかし夫に信用されることのない過去の自分を悔やみ、今の自分を情けなく思い、勢いよく家を飛び出すと、道路を2、3本越えた先の橋の欄干から身を投げ出し、その命を絶ったのでした……」

ダイヤ「……そう、その時のわたくしもそんな顔をしていたと思いますわ」

ダイヤ「一体この話のどこに黒いオーラが関係するのですか」

ダイヤ「……分かったかも、果南さんはそう言うと、もしかするとアイーダに水子の霊が憑いていたんでしょ?おばさんはそれが見えたんじゃないの?と答えましたが、おばさんと言われたことに腹を立てたのかまた5分ほど叱られました」

29: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:33:31.62 ID:Slrltcd2
ダイヤ「鞠莉さんのお母様は果南さんの意見に同意して、かつて堕胎によって自分を殺した母への恨みを晴らすために、水子がアイーダを追い詰めたのでしょうと話しましたわ」

ダイヤ「果南さんは自分の推理が当たったことに満足しながら、でも私もダイヤも妊娠したことなんてないから鞠莉と遊んでも平気だよ、とあっけらかんとしていたのですわ」

ダイヤ「ハグゥは物分かりが悪いわね、と言いながら果南さんの態度に溜め息を吐く姿を見ながら、わたくしはまた別のことを考えていました」

30: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:35:01.92 ID:Slrltcd2
ダイヤ「仮に背後からの視線や自室へのいたずら、ドッペルゲンガーを思わせる目撃談がすべて水子の仕業だったとして、でも、なぜアイーダが他の男性と関わりを持っていなかったと断言できたのでしょう、距離を置いたと話していたのに……単なる言葉のあやなのかしら……」

ダイヤ「だめ押しに、その黒い影に見初められた者もまた、悪霊の眷属になってしまうのです、などと取って付けたようなエピローグまで御披露されて」

ダイヤ「ひょっとして、これはやっぱりわたくしと果南さんとを怖がらせるための作り話……それとも……なんて、映画や小説の見すぎですわね、忘れてくださいな」

31: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:35:46.66 ID:Slrltcd2
善子「占いって、所詮オカルトだと思ってない?違うのよ、ほんとは、占いって現実に準拠した魔法なの」

32: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:36:12.41 ID:Slrltcd2
善子「いい?ジュース、塩、ジャム、この中から好きなものをひとつ選んでみて?ああ、ダメダメ、口に出さずに頭で考えておいてよ!」

善子「次は今選んだものに関係する言葉を、りんご、海水、カレーから選んでちょうだい」

善子「次はこの中から、今選んだ言葉に関係するものを選ぶのよ、電池、赤い、辛い」

善子「これが最後、パソコン、地球、唐辛子、さっき選んだ言葉に関係するものをひとつ決めたかしら?」

善子「……それって、唐辛子よね?どう、当たり?」

善子「ふふふふ、トリックが簡単すぎるって?幼稚園の先生がこの問い掛けを教えてくれたとき、どうして私の頭の中が分かるんだろうって不思議だったわ」

33: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:36:50.27 ID:Slrltcd2
善子「これ、洗脳のやり方なのよ、こちらの欲しい答えを、相手がまるで自分自身で弾き出したかのように思い込ませるためのね、当然詐欺師のような人が行うときはもっと複雑な手順を踏むけれど」

善子「詐欺の営業や宗教の勧誘って、喫茶店やファミレスの座席で繰り広げられているイメージが無いかしら?」

善子「密室や個室で話をすると、第三者からの情報を容易に入手できないから、より洗脳の深度が深まるのよ」

善子「そんな場所で相手の持つ考えをすべて否定することで、今までの自分は間違っていたんだ、という自己否定感を植え付けることが出来るの」

34: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:38:08.59 ID:Slrltcd2
善子「あとはプライベートな空間、例えば部室だったり、自分の部屋だったり、本来部外者の立ち入らない場所で会話をすると、その相手がそこにいるという事実が信用度をより高めるわ」

善子「保険の営業や家電の取り付けの人って、居間に上げてお茶を出してあげるじゃない?あれって、自ら相手の土俵に立ってしまっているのよ」

善子「自分の担当の保険屋さんが、新しいプランを提案してくれている、お茶を飲んで雑談している電気屋さんが、洗濯機の故障に気が付いて部品の手配をしてくれた、そんなの自分のためなんだって簡単に信じちゃうわよね、本当はその信頼感って、自分で作り出した幻想なのに」

善子「閉じられた空間で、今のあなたは間違っている、でも、こういう考え方をしてみたら前向きになれるわよ、なんて優しく声を掛けられたら、誰だって従ってしまうわ」

35: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:38:40.28 ID:Slrltcd2
善子「そうして、相手が自分の言う通りにしたら、褒めてあげるの」

善子「自己否定感は一転、褒められたことで承認欲求が満たされて、自己肯定感へと昇華されるってわけ」

善子「ヨハネが配信でやってる占いもこれの応用よ」

善子「自室という閉じた空間で、会員制のSNSを通して、相談者の悩みを否定して、新しい価値観を植え付けてあげるの」

善子「ほら、私って幼い頃から運が悪かったでしょ?でも、幼稚園の先生の掛けてくれたいくつかの魔法によって、確かに世界は自分の見ている通りにしか映らない、だけどその見え方は他人の力で前向きに方向付けられる、ってことを実感したのよ」

36: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:39:05.54 ID:Slrltcd2
花丸「悪霊を払うには、その反対の要素や異なる存在をぶつけるんだよ、丸が聖歌隊に入ったのはその練習のためなんだぁ」

37: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:39:30.15 ID:Slrltcd2
花丸「一つの宗派に拘ってその道を極めたいなら話は別だけど、実家がお寺なのにキリスト教由来の集まりに参加することで、また別の価値観を手にして、より災いを遠ざけることが出来るって、じいちゃんにそう教わったずら」

花丸「じいちゃんは昔からこの辺りで起きる怪異の相談を受けていて、中にはそこらの住職やお坊さんでは解決できない、たちの悪い幽霊に関する報告もあったずら」
 
花丸「オラはじいちゃんの武勇伝を聞くのが好きで、その流れで除霊の仕方もいくつか習ったんだぁ」

花丸「それで、じいちゃんから聞いた中で一番印象に残っている出来事があって……古くからこの地をねぐらにしている、道祖神に取り付かれた男の人の話なんだけど」

38: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:40:01.61 ID:Slrltcd2
花丸「その人、内浦港付近のとある居酒屋で飲んだ帰りに、気分が大きくなったのか道路に転がる石を力一杯投げ付けたみたいで、運悪くそれが歩道の脇にあった神の社を壊してしまったずら」

花丸「不味いとは思ったものの、いつ出来たのかも分からない、風雨で酷く汚れた祠だし、祟りも何もないだろうって逃げるようにして帰ったの」

花丸「……でも神様は見ていたずら、家に着く前にはすでに災いが降りかかってきて、その晩は酔って感覚が麻痺していたから違和感に気が付かなかったけど、翌朝起きてみると顔中が酷く腫れて、全身がムチウチ症に掛かったように痛んだらしくて」

花丸「すぐに119番を押して、沼津から救急車がやって来るとそれに乗って地元の病院へ向かったものの、看護師さんもお医者さんも目を背けるようにして、うちでは手の施しようがない、だなんて返したそうずら」

花丸「そこでその男性はタクシーに乗り換えて、うちのお寺へやってきたみたいなの」

花丸「じいちゃんは事態を重く見て、まずはその祠へと向かい、誠心誠意謝ってみたけど許しは貰えず……」

39: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:40:31.75 ID:Slrltcd2
花丸「そもそも道祖神やお地蔵さまの祀られた祠って、この世とあの世の境目、本来は真っ当に暮らす人が関わってはならない領域なんだよ」

花丸「そこへ不本意とはいえ石を投げ込んだ以上、それは自ら相手の世界へと足を踏み入れたわけで、神様側からすれば、いくら許しを請われたところでその通りにする道理は無いずら」

花丸「これは不味いと考えたじいちゃんは、相手が神とはいえ、除霊することを決断したんだ」

40: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:41:06.52 ID:Slrltcd2
花丸「除霊の手段は、全く異なる要素を準備することからだったよね」

花丸「まずは前提を置き換えるの、悪いのは男性、神は被害者、という立場を、男性は悪くない、いつまでも許さない神が悪い、とするずら」

花丸「神が悪いのだから、どのような仕打ちを受けても仕方がない、除霊にはその意思が大事なんだって、絶対にこっちが引いちゃダメ」

花丸「心構えさえ整えれば除霊自体は簡単なもので、投石で打ち崩された祠にさらに追い討ちを掛けて、塵すら残らないほどに一掃するずら」

花丸「ここで手を抜くと、かえって報復を味わうことになるから」

花丸「このときはじいちゃんに並ぶ有力者の力も借りて、徹底的に全壊させたって言ってたなぁ」

41: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:41:42.55 ID:Slrltcd2
花丸「……思ってたよりも除霊が簡単すぎるって?人は悪霊に取り付かれたとき、悪霊のことを考えすぎて深みにはまってしまうずら」

花丸「ここも発想を転換して、自分に執着する存在があるのなら、それを自分は無視をする、あるいは相手の存在そのものを無くしてしまう、とすればすぐに解決出来るんだよ」

花丸「……ああ、壊した祠はどうしたかって?祠が無くなった時点では、神の依り代が消えたってだけだからね、火を起こして燃やしたら煙や炎に乗って、海に流したら水に溶け込んでより広がって、また神の存在が表に出てきちゃうずら」

花丸「じいちゃんはどうしたんだっけなぁ……一つの神社に二つ以上の神や霊を祀ることを合祠って言うんだけど、確か裏山にある古い社に、解体した祠の残骸と共に合わせ祀ってきたって言ってたような……」

42: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:42:16.59 ID:Slrltcd2
曜「子供の頃かぁ、特にこれといって不思議な体験ってしたことないんだよね!」

43: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:42:42.06 ID:Slrltcd2
曜「怖い話?うーん……そうだ!パパから聞いた話でも大丈夫?」

曜「フェリーを運航させてると、乗客が海に落下するなんて事故を自分が経験したり、仲間が起こしたりすることがあるみたいでさ」

曜「落ちたことに気付かないことも当然あって、そんなときは残念だけど……そうなっちゃうよね……」

曜「もしも別の乗客が落下に気付いて知らせてくれたら、救命ボートを投げ込んだり、船を停止させたりして救助に向かうんだけど、じゃあこれが夜だったら?」

曜「まずは落ちた人がどこにいるか確認するために、ライトで照らす必要があるよね」

曜「おーい、ここにいるぞー、なんて手を振って、乗組員が見付けたなら……まあ助かるよ、大抵は」

44: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:43:18.58 ID:Slrltcd2
曜「大抵はって言うのはね、ライトで海に浮かぶ人を照らすでしょ?ただ、船は停めていても、海の波は止まってはくれないよ」

曜「波が船を揺らして、いくら慣れている乗組員だって、ライトを持つ手を固定し続けることなんて出来ないから、はじめは捕捉していた遭難者を見失うことがあるかもしれない」

曜「そうしてまたライトで照らし直すんだ、さっきまで人がいた場所を」

曜「でも消えてるんだよ、遭難者の姿がさ……」

45: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:44:12.48 ID:Slrltcd2
曜「一度光が自分を外れると、もうもたないんだよね、気力が」

曜「助けてもらえなかったんだって急に弱気になって、さっきまでの元気は綺麗さっぱり無くなって、海の中へと沈んじゃうんだ」

曜「……ところで、そういう梨子ちゃんは怖い体験ってしたことあるの?」

梨子「えっ?ううん、私はそんな経験無いから、Aqoursのみんなはどうなんだろうなぁって聞いてみただけなの」

曜「なあんだ、そっかぁ!他のみんなの話も聞かせてよ!……あっ、もうバスが来るよ、明日聞かせてね!」

梨子「う、うん、じゃあまた明日ね」

46: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:44:38.10 ID:Slrltcd2
梨子(私は子供の頃、内浦に住んでいました)

47: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:45:03.83 ID:Slrltcd2
梨子(高校生になって再びこの地へ戻ってきたとき、なんだか昔見た内浦の景色とは違って見えました)

梨子(でも、浦女へ入って千歌ちゃんに出会ってAqoursを作って……そんな慌ただしい生活の中で、当初抱いた違和感はどこかへ消えていました……3年生になり、静真高校へ転入するまでは……)

梨子(静真への転校初日、沼津から内浦へと、バスに乗って帰りました)

梨子(多比第二トンネルを潜り抜けると、口野放水路の交差点が見え、左手には狩野川の姿も映ります)

梨子(交差点を右手へ進むと、いよいよ内浦の青く澄んだ海が大きく広がり、私は懐かしさを感じるはずでした)

梨子(たった半日足らず地元から離れただけでしたが、こういうときってそういうものですよね、新しい環境に馴染めるか不安に思うせいか体が強張ってしまい、自宅が近付くと緊張は解けてやっとくつろげる……)

48: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:45:35.98 ID:Slrltcd2
梨子(そんな解放感を期待していたのですが、バスが内浦へと差し掛かったとき、私は1年前の違和感を再び味わうこととなりました)

梨子(この違和感が何なのか、子供の頃には感じなかったはずの何かが、この地に蔓延している……)

梨子(まあ、すぐに消えるだろうと思っていたのに、沼津から内浦へ帰る度に、日増しに違和感は思い違いという範疇を越えて、確信へと近付いていきます)

梨子(山と海に囲まれた、綺麗な自然溢れる内浦に感じる違和感……)

49: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:46:24.95 ID:Slrltcd2
梨子母「おかえりなさい」

梨子「ただいま、お母さん……あれ?今日って何かあった?」

梨子母「家庭訪問よ、もう先生の来る時間じゃないかしら?」

梨子「そうだ、忘れてた!だからこんなに玄関先が片付けてられてるんだ!」

梨子母「いつもこれくらい綺麗よ、ということでお願いね」

梨子「ふふふ、はぁい」

50: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:46:50.28 ID:Slrltcd2
梨子(……あぁ)

梨子「……そうか」

梨子母「え、何か言った?」

梨子「ううん、何にも!着替えてくるね!」

梨子母「?」

梨子(そうか、内浦に感じる違和感……)

梨子(これと同じなんだ……)

梨子(内浦は……)

梨子(内浦は、妙に綺麗すぎるんだ……)

51: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:46:55.29 ID:Slrltcd2
終わり

52: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 01:47:22.23 ID:pa2dnRUO
全部繋がってるこれ?

55: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 02:28:31.00 ID:iwdoXQd9
まるちゃんの話の道祖神と千歌ちゃんの話の井戸は繋がってそう
それ以外はわからんな

56: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 02:43:58.49 ID:0EOCDplQ
曜ちゃんとダイヤさんと果南ちゃんの話も繋がってそう

54: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 02:11:03.03 ID:XvRYUB5f
こういうのすき

57: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 02:45:48.87 ID:wlI/O8+P
ガイジ神のワイにもわかるように解説をお願いします

60: 輝きたい名無しさん 2019/08/10(土) 07:13:51.13 ID:eWXnGXXf
一つ一つが独立した話じゃないかとおもうけどそれぞれに関連があるとするなら

花丸のじいちゃんが「悪いのは男性の大人」をすげ替えたのが女性の子供になった→鞠莉の耳鳴り

じいちゃんは合祀ではなく神様を閉じ込めた→果南の井戸

家という密室で鞠莉の望む耳鳴りの解決策→一種の洗脳

梨子の違和感→果南の言っていた海から陸に戻った時の違和感と同じ、内浦は梨子にとっての異界

あとは鞠莉の母親の話はダイヤに向けたもの→黒澤家の過去の出来事をもとにした話でルビィの座敷牢と関係?

引用元:http://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1565367537/










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2019/08/10 20:00 | SS | コメント(3)

この記事のコメント

  1. 名無しライバーさん:2019/08/10(土) 21:23:05
  2. こういうのめっちゃ好きだわ

  3. 名無しライバーさん:2019/08/10(土) 23:30:54
  4. なんか部室で一人づつ怖い話披露していく
    スーファミのゲーム思い出したわ

  5. 名無しライバーさん:2019/08/11(日) 06:18:22
  6. めっちゃ面白かった

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